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【日本の議論】進まない憲法審 「原案は自然に集約」「論点洗い出しを」

衆院憲法審査会に臨む与野党議員=11月28日、国会(春名中撮影)
衆院憲法審査会に臨む与野党議員=11月28日、国会(春名中撮影)

 先の臨時国会の衆院憲法審査会では約2年ぶりに自由討議が開かれたが、憲法改正に向けた議論は深まらなかった。改憲手続きを定めた国民投票法の改正案をめぐっても、自民党は採決を求めたが、野党と折り合わず5国会連続で先送りとなった。憲法審の議論はどこに向かうのか、衆院憲法審与党筆頭幹事を務める新藤義孝氏(自民党)と、野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主党)に聞いた。

新藤義孝氏「改憲原案は自然に集約」

 --先の臨時国会の衆院憲法審査会では約2年ぶりに自由討議が開かれた

 「喜ばしいことだ。憲法審査会の現場である幹事会は与野党の信頼を前提に運営されている。政局から離れて国民のための議論を深めようという共通認識がある。この要素が大きい」

 --3回の自由討議は欧州視察に関する内容で、憲法改正原案の策定につながる機運はない

 「討議を重ねることが憲法改正の論議を深めていくきっかけになる。『ここからは改憲原案のための議論を行います』と宣言をするものではない。臨時国会の議論は安全保障、緊急事態、教育、憲法裁判所など国の根幹に関わる内容だった。議論が深まれば『この問題については改憲原案をつくり、国民の判断をいただくべきだ』と与野党の意見が自然に集約されていくだろう」

 --9条への自衛隊明記など4項目の自民党改憲案を国会に提示する必要性は

 「改憲イメージ案は既に提示、党大会で正式に発表し、あらゆるところで『議論のたたき台にしてほしい』と訴えている。自由討議では野党からも触れていただいた。改めて手続きをとるのではなく憲法論議を自然に進めることで、改正の『中身』の議論が深まっていく」

 --改憲手続きを定めた国民投票法改正案採決も見送られた

 「改正案の7項目は公職選挙法に合わせたもので、ほぼ全ての政党が賛同しており、趣旨説明も聴取している。採決するのは国会の責任だ。採決後、野党が求めるCM規制について議論を始めることで審査会の現場は合意している。しかし、野党の“上の判断”で、なかなか採決の合意を履行できない」

 --野党抜きでの採決に踏み切る選択肢は

 「考えなかった。憲法の議論は一般の法案審議と違う。憲法改正の発議までが国会の役割で、最終的な判断は国民が行う。与野党が政局から離れて議論しなければ国民に示す案は作れない」

 --安倍晋三首相(自民党総裁)は「私の手で成し遂げたい」と憲法改正に意欲を示した

 「一貫した自分の思いを話したのだろう。首相は併せて、あらかじめスケジュールを決めるものではなく、議論は国会の場で行われると何度も発言している」

 --来年の通常国会は、どう臨むか

 「野党と折り合いがつけば速やかに審査会を開き、憲法論議を進める。同時に、国民投票法改正案の質疑と採決も求める。この二本立てで粛々とやっていきたい」  (石鍋圭)

     

しんどう・よしたか 昭和33年、埼玉県生まれ。明治大文学部卒。平成8年10月の衆院選で初当選。当選7回。経済産業副大臣、総務相などを歴任。30年11月から衆院憲法審の与党筆頭幹事。超党派の「日本の領土を守るため行動する議員連盟」会長も務める。

 山花郁夫氏「各党で論点洗い出しを」

 --臨時国会の憲法審査会での議論を振り返るとどうだったか

 「現状は国民投票法の改正案が議題で、(野党は)CM規制やインターネットなどの問題を議論すべきだと言っている。臨時国会では憲法審の幹事懇談会でそういった論点について意見交換をする機会があり、一定程度、成果があった」

 --自民党は国民投票法改正案の採決を求めたが、立憲民主党などと折り合わず、見送られた

 「こちらも国民投票法の改正については議論して採決してほしいと言っている。CM規制は同じ国民投票法の改正なので、同時決着がいい。自民党は採決した後に議論しようと言うが、国会のルールからすれば極めて異例だ。ただブロックしているというのではなく、普通のことを言っているつもりだ」

 「これとは別に、国民投票法の付則に国民投票制度の意義や必要性を検討すると規定されている。本来なら、とっくに終わってないといけない話だが、放置されていて罪深いことだ」

 --安倍晋三首相が9日の記者会見で憲法改正を「私の手で成し遂げたい」と述べた

 「単に憲法改正といっても何をしたいのか曖昧だ。しかも改憲の発議をするのは国会であって、行政府ではない。誤解しているのではないか」

 --自民党は9条への自衛隊明記などの改憲4項目を示している

 「4項目はいずれも立法事実(法律を作る根拠)がよく分からない。また『どこの党の案』ということになると、国民投票を見据えたときによくない。英国などのように中身より、時の政権に対する評価のようなもので投票されることが起こり得る。いきなり案を出すということではなく、各党で立法事実を示して論点を洗い出した上で議論することが望ましい」

 --改憲議論の必要性は。立民は「立憲的憲法論議」という考え方を掲げている

 「臨時国会の召集要求や解散権などのテーマについて、なぜ今の書き方では問題があるかということで挙げている。権力を縛る立憲主義の方向でちゃんと議論しようということだ」

 --今後の憲法審での議論に期待することは

 「こちらが提起しているのは国民投票になったときの(CM規制による)ルールの公正さのところで、自民党には受けてもらいたい。臨時国会では少しは折り合った部分ができたので、自民党の方針もあるだろうから分からないところもあるが、情勢が動いてほしいという気持ちだ」 (中村智●(=隆の生の上に一))

     

やまはな・いくお 昭和42年、東京都生まれ。立命館大法学部卒。専門学校講師を経て平成12年6月の衆院選で初当選。当選4回。法務副大臣、外務政務官などを歴任。29年11月から衆院憲法審の野党筆頭幹事。立憲民主党憲法調査会長も務める。

 【記者の目】通常国会は違うアプローチで

 9月から憲法取材を担当し、先の臨時国会では衆院憲法審査会で与党筆頭幹事を務める新藤義孝氏(自民党)に張り付いた。終始一貫、新藤氏は野党に丁寧に対応し、審査会の円満な運営に心を砕いた。

 野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主党)にしても、はなから憲法論議を排除しようという立場ではない。新藤氏の言葉通り、今の審査会の現場には一定の信頼関係がある。

 それにもかかわらず、国民投票法改正案の採決は見送られ、5国会にわたる継続審議となった。ほぼ争点のない改正案でさえこの停滞ぶりだ。憲法改正原案がつくられるのは一体、何年後になるのだろうか。

 現場の信頼関係は大切だが、このままでは来年の通常国会でも同じ光景が繰り返される気がしてならない。改憲に反対する野党はそれで良いのだろうが、与党は違ったアプローチも考える必要があるのではないか。   (石鍋圭)

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