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パラ競泳(知的障害)平泳ぎ世界記録保持者、山口尚秀が追求する泳ぎ

今夏のパラ競泳の世界選手権男子100メートル平泳ぎ(知的障害)で世界記録を樹立した山口尚秀
今夏のパラ競泳の世界選手権男子100メートル平泳ぎ(知的障害)で世界記録を樹立した山口尚秀

 パラリンピックは、身体障害者(肢体不自由)だけでなく、視覚障害と脳性まひ、知的障害も対象としている。今夏に彗星(すいせい)のごとく現れ、9月に行われたパラ競泳の世界選手権男子100メートル平泳ぎ(知的障害)で世界記録を樹立し金メダルを獲得。一躍東京パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げたのが競泳男子の山口尚秀(19)だ。

 12月11日に都内で報道陣向けに行われた知的障害競技の説明会。「(水中で)抵抗の少ない泳ぎを目指して努力することで(水泳が)大好きになった」。選手代表として登壇した山口は、競技の魅力について力強くこう語った。

 パラリンピックで知的障害のクラスは1つしかなく、実施されているのも全22競技中、陸上、水泳、卓球の3競技しかない。もともと第11回2000年シドニー大会からの加入で歴史は浅いうえ、シドニー大会の男子バスケットボールで金メダルを獲得したスペインチーム12人のうち10人が健常者だった不正が発覚。04年アテネ、08年北京では参加が認められなかった。

 山口は3歳のとき、知的障害を伴う自閉症と診断された。会話する能力や言語は年齢相応に期待されるよりも未熟で、コミュニケーションが難しい傾向があるという。ただ、水には1歳から親しみを持っていたようで、小学4年からスイミングスクールに通い始めるとめきめき上達。日本知的障害者水泳連盟に選手登録したのは17年4月で、今年2月に国際大会デビューを果たしたばかりだった。

 身長187センチ、体重85キロ。一般アスリートに引けを取らない恵まれた体格だ。長い腕と靴のサイズ30センチという大きな足を生かし、水中で水をぐっと捉える。同連盟の強化合宿では、自身の水中映像を見ながらフォームを改造。ウエートトレーニングで体幹を鍛え、五輪2大会連続2冠の北島康介も武器した「水の抵抗を減らす泳ぎ」を追求し続けている。

 9月の世界選手権は緊張しなかったという。旗手を務めた開会式では、両手で大きく日の丸の大旗を振り、プールサイドを笑顔で行進するほどの余裕があった。「世界で戦えることが光栄で泳ぐことが楽しみだった」と振り返る。迎えた男子100メートル平泳ぎ決勝は、知的障害者として初めて1分5秒台の壁を破る1分4秒95をマーク。わずか10カ月で約3秒も短縮した。

 今秋には、長野県東御市に国内初の高地トレーニング施設(標高約1750メートル)が完成し、自身初の高地トレも実現した。東京五輪を目指す選手らと隣のレーンで泳ぐ機会もあり、「トップ選手の取り組み方に学ぶことが多かった」とにっこり。同連盟の谷口裕美子専務理事は「(健常者の日本代表と)同じ空間で頑張れる環境ができたことは大きい」と話す。

 20年パラでは、アスリートとして最も高いところを目指す。「世界記録を更新して金メダルを獲得したい」と山口。世界一流の泳ぎを追求しながら、パラ界最高峰の舞台を心待ちにしている。(運動部 西沢綾里)

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