好調ホンダ F1人気は復活するか

久しぶりにホンダエンジンのマシンが気を吐いているのも人気回復を後押しする。レッドブル・ホンダは開幕戦で3位となり、ホンダエンジンとして11年ぶりのF1表彰台に上ったのを皮切りに、第9戦、第11戦と1位に輝いている。
日本勢への期待の高まりが観客動員数にも直結することから、鈴鹿は今年、1万2千席の「ホンダ応援席」を特設した。決勝では席を埋めたファンがホンダのロゴ入りキャップをかぶり、フラッグを振ってスタンドを揺らした。
結果はレッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボン(タイ)が4位に入った。トロロッソ・ホンダ勢はピエール・ガスリー(フランス)が7位、ダニール・クビアト(ロシア)は10位となった。
鈴鹿サーキットは、観客の歓声や拍手がドライバーやチームスタッフが控えるピットロード側にもよく届く構造と聞く。「F1ドライバーたちがよく口にするのは、海外のファンはひいきのドライバーしか眼中にないことが多いのに対して、日本のファンはすべてのドライバーに敬意を持って接してくれていることへの驚きです」とモビリティランドの荒木専務。この日も観客席の興奮がピットに伝わったはずだ。
興奮に感染する場所
F1日本グランプリ(GP)の取材で訪れた鈴鹿サーキットは「静か」だった。防音が施されたメディアセンターで取材していると、世界中から集まったモータースポーツジャーナリストたちも、淡々とレース経過を追っていた。
もちろん、観客席をはじめサーキット中に、腹の底に響く排気音がとどろき渡っている。静かと感じたのは、久しぶりのレース観戦である上に「仕事で来ている」意識が優先され、到着してすぐには、ファンの熱気に同調することができなかったためかもしれない。
趣味でもあるモータースポーツの、それも最上級の現場に来ていると思えないほど、冷静な気持ちで始めたF1取材だったが、予選、決勝とスケジュールが進むにつれて、サーキットに満ちる興奮が移ってきた。加速、減速を繰り返し、最高速は時速300キロをオーバーするマシン。ひいきのドライバーやチームの順位に一喜一憂しながら持参した旗を振り回し、声援を送るスタンドを埋めた観客たち。
いつの間にか熱気に感染し、仕事中ではありながら、ホンダエンジンのマシンを応援していた。取材が決まった時点では名前を知らないドライバーも多かった。そんな“元F1ファン”も興奮させる「何か」が、やはり鈴鹿サーキットにはあった。