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ゴッホを理解するための「ハーグ時代」 圀府寺司・大阪大学教授が講演

ゴッホ展関連の講演会で話をする圀府寺司・阪大教授=9日、東京都台東区(飯田英男撮影)
ゴッホ展関連の講演会で話をする圀府寺司・阪大教授=9日、東京都台東区(飯田英男撮影)

 東京・上野の森美術館で開催中の「ゴッホ展」(産経新聞社など主催)の関連企画として、ゴッホ研究の第一人者として知られる圀府寺(こうでら)司・大阪大学教授が9日、東京都美術館講堂で特別講演会を行った。「ファン・ゴッホとハーグ-画家がもっとも長く住みその芸術的個性を育んだ都市」をテーマに、ゴッホの画業におけるハーグ時代の重要性を語った。

 《ハーグはオランダ南西部の都市。王室や行政機関が置かれる政治と文化の中心地だ》

 ゴッホが住んだ大都市としては、ハーグ、パリ、ロンドンがあげられますが、ハーグはその中でも計6年という最も長い時間を過ごしました。

 ゴッホが最初にハーグにやってきたのは16歳。有力な美術商「グーピル画廊」に勤務し、ロンドンに転勤するまでの4年間で、多くの美術作品に触れ、作品を見る目を養います。

 その後ゴッホは伝道師見習いなどを経て、画家になろうと決意し、28歳で再びハーグへ。縁戚で「ハーグ派」の中心的な画家、アントン・マウフェに教えを乞います。

 ハーグは非常に美しく、都市だけでなく、田園や海岸など画題に富んだ街でした。画壇もあり、その中でも特にクオリティが高く多様性が豊かな一派が、今回の展覧会でも紹介されているハーグ派です。

マウフェの影響

 マウフェは描写力や構成力があり、才能豊かな画家です。特に羊が得意で、今回出品されている「雪の中の羊飼いと羊の群れ」も非常にうまい絵ですね。人格者でもあり、ゴッホに懇切丁寧に油彩や水彩の手ほどきをしています。ゴッホとマウフェはいずれも牧師の息子で、作品の中でも、遠景に教会の尖塔(せんとう)を配置することが多いなどの共通点があります。

 マテイス・マリスもユニークな画家ですね。ロマンチックな資質があり、「『デ・オールスプロング(水源)』オーステルベークの森の風景」のように写実的でありながらも、どこか幻想的な作品も手がけています。詳しくは後に述べますが、ゴッホも彼の影響を受け木の根っこを描いています。

 《1886年、ゴッホはオランダを離れ、パリ、アルルと移り住むが、「耳切り事件」をきっかけにサン=レミの精神療養院に入院する》

 パリ、アルルと作風を劇的に変化させてきたゴッホですが、サン=レミでは自由に外に行けないことから内省を深め、「北への回帰」とでもいうべき様式の展開に至っています。自身も「パリ以前に求めていたものに戻りつつある」と手紙で語っています。

植物に魂を投影

 ゴッホは土地ごとの特徴的な植物に自分の魂を投影してきました。サン=レミでは糸杉に取り憑(つ)かれます。糸杉はアルルにもあったのに、なぜサン=レミでだったのか。病院に隔離されていたからです。全く画家として売れる見込みがなかったオランダ時代は枝を刈られた柳を描いていました。ゴッホは孤独を感じると、木に戻るんですね。「蔦の絡まる幹」でも、かつてマリスが描いたような木の根っこの絵に取り組んでいます。

 《ゴッホが最も長く暮らしたハーグは、その画業に何をもたらしたのか》

 ゴッホが美術商として過ごした4年間は、絵を見る土台を作った、とても重要なものでした。また、その後の2年間で、画家としての基礎を確立させます。ゴッホにとってハーグはどれほど重要な意味を持った街だったのか…。彼はこんな言葉を残しています。「ハーグは僕にとって、第二の故郷のようなものだから」

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