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考古学に熱中した吉野彰さんに続け 産業界が学生に幅広い教養を求める理由

「人文知応援フォーラム」の運営委員を務める(右から)榊原定征・日本経団連名誉会長、代表の大原謙一郎・大原美術館名誉館長、近藤誠一・元文化庁長官、作家の林真理子さん
「人文知応援フォーラム」の運営委員を務める(右から)榊原定征・日本経団連名誉会長、代表の大原謙一郎・大原美術館名誉館長、近藤誠一・元文化庁長官、作家の林真理子さん

 考古学に熱中したノーベル化学賞の吉野彰氏に続け-。文系理系の枠を超えた次世代の人材育成を支援しようと、財界人らが旗振り役を務める「人文知応援フォーラム」が発足した。代表に大原謙一郎・大原美術館名誉館長が就いたほか、榊原定征・日本経団連名誉会長が運営委員を務める。今後は文部科学省に“もの申す”存在にもなりそうだ。    (文化部 伊藤洋一)

 しなやかな知識必要

 同フォーラムによると、「人文知」は文化や芸術に親しみ、人文学を身に付けることで生まれる知恵を意味するという。運営委員を務めるのは近藤誠一・元文化庁長官、生物学者の福岡伸一さん、フリーアナウンサーの草野満代さんら計9人。10月21日には東京都内で設立会合を開き、来年3月末までに具体的な活動内容を決めることを申し合わせた。

 会合後に会見した大原氏は、企業(クラレ副社長)から美術館経営に転身した経験をもとに「世界に通用する人材を育てるには文化・芸術・人文学をさらに振興させる必要がある。とくに理系の学生は人文学に触れる機会が少なくなっている。社会の急速な変化、不測の事態に対応するには、しなやかな知識と価値観が求められる」と、設立の趣旨を説明した。

文学衰退を危惧

 メンバーにある危機感は、令和4年度に実施される高校国語科の新学習指導要領だ。選択科目が現行の国語表現、現代文A・B、古典A・Bから、論理国語、文学国語、国語表現、古典探究となる。来年度から導入される大学入学共通テストのサンプル問題のなかに、実用的文章を素材にした設問がいくつもあったため、特に進学校の高校生が近代文学に触れる機会が減るのでは-という懸念が関係者の間で強まり、日本文学の研究者らが属する日本近代文学会などから、文学の衰退を危惧する声明が出されている。

 同席した作家の林真理子さんは、「利益追求の世の中になろうとしている。知性や教養はなくても生きていけるかもしれないが、自分が無知だとわかったときは、恐怖心に襲われた。知性や教養とは何か、その第一歩を教えてさしあげられれば」とフォーラム運営委員を引き受けた理由を語った。

 また榊原氏は経団連会長時代、理系学生を理系分野の勉強に集中させる人材育成戦略を提示した文科省に、異議を唱えた逸話を披露。「産業界は、大学時代に哲学や歴史を学んだ幅広い教養を持った人を求めている。ノーベル化学賞に決まった吉野彰さんは大学時代、考古学に熱中された。技術だけではなく、感性を養うことが重要だ」と人文学の大切さを訴えた。

口は出すけど金は…

 同フォーラムは文化や芸術、人文学のイベントの周知に協力するほか、講演会やセミナーなどを全国各地で開催したいという。

 ただ、予算があるわけではない。大原氏は「委員のみなさんには手弁当でお願いしたし、イベントなどもタダで会場を使わせてもらえるところを探していく。(委員の)個人個人の発信力は非常に強い。お金をかけず、工夫していきたい」と話した。

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