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【いざ!東京五輪】カギは「開き直り」 スポーツ心理学が伝える五輪対策

ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンスで「プレッシャー対策」について登壇した立谷泰久氏=10月28日、味の素ナショナルトレーニングセンター
ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンスで「プレッシャー対策」について登壇した立谷泰久氏=10月28日、味の素ナショナルトレーニングセンター

 「五輪まで(期間は)短いと取るか、長いと取るか」-。味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC、東京都北区)の大研究室に、説得力ある声が響き渡った。2020年東京五輪へ向けた研究や取り組みを発表するハイパフォーマンススポーツ・カンファレンス(10月28、29日)での一コマだ。声の主は、国立スポーツ科学センター(JISS)でスポーツ心理学を研究している立谷泰久氏。知っておくべき「五輪対策」が披露された。

 JISSは、日本のスポーツ医・科学研究の中枢機関。13年に五輪の東京開催が決定して以降、力を入れて研究を進めてきたのが、「暑熱対策」と、立谷氏が専門とする「プレッシャー対策」だった。

 本来の力を発揮できるかどうかは、心理的な要因が大きいとされている。筆者は、1996年アトランタ五輪の競泳女子100メートルバタフライに出場した。当時14歳。招集所で一回り大きな海外勢と並び、「戦えるのか」と不安にかられ、孤独を感じ、初めてスタート台で足が震えた。結果は自己ベストから1秒以上遅れて6位。五輪の苦い記憶だ。

 米国開催でさえ、そうだったのに、自国開催の五輪の重圧は計り知れない。カンファレンスに登壇した立谷氏のテーマは、ずばり「自国開催のプレッシャーを克服する」。そんな策があるならば、ぜひとも知りたいと、私は選手を代表する気持ちで足を運んだ。

 同氏によると、「プレッシャー対策」を主としたプロジェクト研究は2015年にスタート。まず、自国開催と他国開催で競技成績の違いを調べると、自国開催での金メダル獲得率は、過去最多16個を獲得した1964年東京五輪(2004年アテネ五輪も16個)をはじめとして、海外でも増加していることが分かった。

 一方で64年の日本競泳陣(銅メダル1個)のように、本来の力を発揮できなかった選手も数多く存在する。

 実力を発揮した選手と、発揮できなかった選手の違いは何なのか。それを知る単純明快な方法が、プロの心理士による聞き取りだ。出場した元選手13人に話を聞き、分析したところ、大きな違いが1つ浮かび上がった。「開き直り」という点だ。

 両者とも大会前は、メディアや応援の多さによって、社会的責任と義務感が生まれたという心理状態は同じだった。そこから実力を発揮できなかった選手は、切迫感によって「柔軟性のなさ」や「解決策のなさ」「いらだち」など負のスパイラルに陥り、不安と重圧を抱えたまま試合を迎えていたという。

 これに対し、実力を発揮できた選手は、切迫した感じになったときに共通して、これまでの取り組み(強化内容)を振り返っており、強気の態度に出る「開き直り」の感情が出現。周囲の声を気にすることなく、自身に集中して試合に臨むことができていた。立谷氏は「『開き直り』をするには、日頃から自分自身を理解し、やるべきことに集中しておくことが重要」と指摘した。

 そして最後に、こうつけ加えた。「選手は、自分一人で戦うと思わないでほしい。コーチら周りも、選手を一人で戦わせないようにすることが大事だと思う」と。

 まさに自分の五輪経験と重なり、目頭が熱くなった。プロジェクトチームでは、競技団体や選手を対象に出張セミナーを実施し、メンタルトレーニングなども指導している。東京五輪まで9カ月を切った。考え方次第で、まだまだできることがあるだろう。(運動部 西沢綾里)

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