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近未来の巨大災害に警鐘 SF作家・小松左京の透徹した眼差し

自宅書斎の小松左京氏(乙部順子氏撮影)
自宅書斎の小松左京氏(乙部順子氏撮影)

 ベストセラー小説「日本沈没」や「復活の日」などで知られるSF作家、小松左京(1931~2011年)の業績を振り返る企画「小松左京展 D計画」が東京都世田谷区の世田谷文学館で開かれている。災害に見舞われる令和の日本。昭和の時代に、自然災害や戦争などを危惧していたSFの巨匠の危機意識が読みとれる。(文化部 伊藤洋一)

日本の重さは48兆トン?

 9年かけて執筆し、昭和48年に発表された「日本沈没」は、地殻変動という社会的なテーマを、エンターテインメント性を盛り込んだSFの視点から提示したことで反響を呼んだ。すぐに映画、ドラマ化される人気ぶりで、小説は今日までに累計470万部を売り上げる。企画展タイトルの「D計画」は作中で遂行されるプロジェクト名で、disaster=大規模な災害を表す。

 3つのテーマに分けられた館内には、原稿や書簡など約500点が展示されている。創作メモには独自に算出したとみられる数字の走り書きも。

 次男で、著作権を管理する「小松左京ライブラリ」の実盛(さねもり)さんは「国土地理院に日本列島の重さを聞きにいったら“わからない”といわれたよう。そこで父は岩盤の厚さなどのデータを集め、日本列島の重量を類推した」と説明する。創作メモには48兆トンとの数字もあり、これが“日本列島の重さ”だった可能性がある。

 開幕時(10月13日)の対談で作家の筒井康隆さん(85)は「小説にはまったく使わないのに、登場人物の詳細な背景メモがあった」と緻密な仕事ぶりを明かし、SF作家の豊田有恒さん(81)も「科学の伝道者、通訳のようだった」と功績に触れていた。日本列島を沈めるために必要な力、日本人を脱出させる具体的なデータを計算していたわけだ。

小説は事実に先んじる

 フィクションである「日本沈没」のなかで高速道路が倒れる場面を描いたところ、当時、耐震工学の専門家から「倒れるはずがない」と非難されたという。しかし、刊行から約30年後の平成7年に発生した阪神大震災では、阪神高速の高架が横倒しになった。

 企画展を担当した同館の中垣理子学芸員は「危機的な状況に立ち向かう登場人物の会話には、濃密な人間模様が凝縮されている。災害の多い日本だけに、どの世代が読んでも、今の時代でも通用する普遍的な作品」と語る。

万博仕掛け人

 「日本沈没」では仮想状況を用いて警鐘を鳴らす一方、子供たちには明るい未来を示そうともした。それが昭和45年の大阪万博。日本テーマ館のサブ・プロデユーサーとして、芸術家の岡本太郎(1911~96年)とタッグを組んだ舞台裏の資料も初めて公開された。「作家の資質とは正反対の、人を束ねる力がすごかった」と筒井さんが語るように、そのバイタリティーの一端を見ることができる。

 一方、父の工場倒産で苦しかった少年時代や、ラジオ大阪で漫才の台本を書いていた日々、出世作「日本アパッチ族」の誕生秘話なども紹介。昭和31年に高橋和巳らと創刊した同人誌に細かい文字で記したガリ版原稿や、産経新聞に連載したルポルタージュ「黄河 中国文明の旅」など膨大な著作、星新一や開高健らと交わした書簡も展示。徹底した調査と、あふれる想像力で作品を送り出した小松左京の世界に迫ることができる。

 12月22日まで、世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1の10の10)。午前10時~午後6時。月曜日は休館。入館料は一般800円。

     ◇

 「小松左京全集」全50巻が、株式会社イオからプリント・オンデマンド形式で販売が始まった。日本アパッチ族(第1巻)や復活の日(第2巻)、さよならジュピター(第8巻)、首都消失(第9巻)、自伝・実存を求めて(第50巻)など。各巻3600円+税で、全国の書店で受け付けている。

 また来年には、「日本沈没」が湯浅政明監督により『日本沈没2020』としてアニメ化され、ネットフリックスで全10話で配信される予定。

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