【エンタメよもやま話】ブルース・リーの場面に反発 「九段線」主張 世界の映画界で物議を醸す中国

さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、本コラムではおなじみの米国ハリウッドと中国に関するお話です。
産経ニュースの10月2日付のコラム「芸能考察」で取り上げた「映画マニア悶絶…媚中ハリウッドに皮肉、タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』」
https://www.sankei.com/entertainments/news/191002/ent1910020006-n1.html
では、7月26日(日本では8月30日)から公開された米国の鬼才クエンティン・タランティーノ監督の最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が、出演俳優の人種問題やギャラの配分をめぐる性差別、中国市場へのすり寄りなど、昨今のハリウッドに横行する「常識」に対する強烈な批判かつ皮肉であると説明しました。
「ちょっと考え過ぎちゃうんかいな」と思われた方もおられたと思いますが、考え過ぎではなかったのです。
この映画では、ここ数年、ハリウッドが媚(こ)びを売る中国のメタファー(隠喩)として、マイク・モー演じる香港のカンフースター、ブルース・リーが登場。彼は撮影所でブラッド・ピット演じるスタントマンのクリフ・ブースを前に、ハリウッドの強さのメタファーとして、米国の伝説的なボクサー、カシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)を引き合いに出し「あんなボクサー、簡単にぶちのめすことができる」と豪語するのですが、ブースに「俺が思うに、お前は大口を叩くつまんねえ小者だよ」とバカにされた挙げ句、カンフー対決でリーが打ち負かされてしまいます。
惨敗した後のリーの稚拙(ちせつ)な言い訳がまさに今の中国そのもので笑ってしまったわけですが、この場面が原因で、何とこの映画、中国でも当初、10月25日から上映が始まる予定だったのに、急遽、上映中止になってしまったのです…。
■タランティーノ監督やはり男気「中国の検閲に…!」
10月18日付の米業界誌ハリウッド・リポーターをはじめ、翌19日付の英紙インディペンデントやガーディアン(いずれも電子版)などが伝えているのですが、ブルース・リーの娘であるシャノン・リーさんが「父のキャラクターの描き方が侮辱的で、事実と異なっている」などとして、中国の国家映画局(NFA)に対し「中国での公開にあたり、タランティーノ監督はこうした描写を再編集すべきである」と主張。この訴えを受け、中国当局がこの映画の公開を無期限に保留するという事実上の公開中止措置を決めたのでした。