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【最新電脳流行本事情】警察小説作家ランキング 小説は警視庁びいきが過ぎる?

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 若い人はピンとこないだろうが、テレビではその昔「火曜サスペンス劇場」(火サス)というドラマ枠があった。火曜になると、必ず誰かが謎の死を遂げ、2時間もすると犯人は崖の上で刑事に追い詰められていた。火サスがなくなっても、警察ドラマは常にどこかの局が制作している人気ジャンル。小説の世界もしかりで、ツイッターの“捜査”で浮かび上がる、最近話題の警察小説の書き手ランキングを作ってみた。   (渡部圭介)

■キャリアの生きざま

 7~9月の読書感想とおぼしきツイート約80万件から、「警察」などの用語を含む約1600件を抽出。文中にある作家名を出現数順に並べた結果は別表の通り。

 警察小説は、靴底を減らしながら捜査にあたる現場の刑事を中心に描いた作品が多い。出現数トップの今野敏(こんの・びん)さんの場合、代表作「隠蔽捜査」シリーズは、警察庁のキャリア官僚が物語の軸となっている。

 フィクションの中の警察キャリアといえば、人気ドラマ「踊る大捜査線」に代表されるように、現場で最前線に立つたたき上げの捜査員と衝突し、捜査や被害者より組織防衛優先みたいな姿で描かれる。

 隠蔽捜査シリーズの主人公、竜崎伸也は立場に応じた振るまい方があると信じ、官僚として正しく生きる覚悟がにじむ。たとえば『隠蔽捜査』(新潮文庫)にはこんなセリフがある。「国をつつがなく運営して、守っていく義務を負っている。だから、いざというときは、真っ先に死ぬ覚悟をしている」

 かっこいい。茨城県東海村の核燃料施設で起きた臨界事故当時の県警本部長で、事故への対応、葛藤がつづられた堀貞行さんの手記『君は部下とともに死ねるか』(時事通信社)を思い出した。

 ちなみに、私自身が会った狭い範囲ではあるが、実際の警察キャリアは正義感にあふれた人は多いし、殉職した部下の話に言葉を詰まらせる人もいた。

 ただ、「マスコミは簡単に牙をむくぞ」という竜崎の言葉に、腹の内が分からない人もいたなぁと、苦々しい記憶がよみがえる。

■読売の記者教育って…

 2位の堂場瞬一(どうば・しゅんいち)さんの作品は、王道の刑事ものが多い。堂場さんが元読売新聞記者ということもあるのだろう。事件そのものにフィクション感が薄い。

 聞き込みを中心とした丹念な捜査から犯人を浮かび上がらせるのも、恐らく実態に近い。「刑事・鳴沢了」シリーズの主人公がはく「ジジイになるまで刑事でいたいんでね」(『雪虫』中公文庫)みたいなセリフを、新聞記者に置き換えて言ってみたい。

 堂場作品は、リアルで地道な捜査過程に、フィクションだからできる要素も絡めて読み物として面白く仕立ててある。そんな筆力を養える読売新聞の記者教育ってすごいなぁと、余計なところでも感心した。

 3位の麻見和史(あさみ・かずし)さんは、ドラマ化もされた「警視庁殺人分析班」シリーズ(刊行当初の副題は「警視庁捜査一課十一係」)から、『石の繭(まゆ)』(講談社文庫)を読んでみた。

 猟奇的な殺人事件が題材で、リアルな警察小説というより、ミステリー色が強い。主人公の如月塔子(きさらぎ・とうこ)が新米女性刑事だったこともあり、映画「羊たちの沈黙」を思い出す。

 ところで、如月の同僚に「鷹野秀昭」という警部補が出てくるのだが、近いものが見えにくい私の目には、一見して「庵野秀明」に見えた。アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズの監督である。マイペースな鷹野のセリフは、庵野さんの穏やかな声で脳内再生されている。

■警視庁びいきが過ぎる!

 4位の「濱嘉之」という作家。ピンとこない方でもも、テレビのコメンテーターとしてもおなじみの元警察官、江藤史朗さんと聞けば知っている人も多いのではないだろうか。

 登場人物のほとんどは、江藤さんが所属していた警視庁の警察官たち。1位の今野さん、3位の麻見さんの作品も、警視庁ものが多い。堂場さんの鳴沢了も、最初は新潟県警の刑事だったのに辞めてしまい、『破弾』では警視庁に移った。

 首都・東京の治安を守る、警視庁の優秀かつ魅力的な警察官たち。実際もそうなのだろうが、ちょっと警視庁びいきが過ぎる。警視庁以外の警察官ならば歯がゆく、私だったら「踊る大捜査線」で織田裕二さん演じる刑事・青島俊作風に、「事件は警視庁管内ばかりで起きてんじゃない!」と叫びたい。

 その点でいくと、5位の柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)さんは、地方を舞台にした作品が多い。

 例えば『虎狼(ころう)の血』(角川文庫)の舞台は広島。暴力団捜査を担当する型破りな広島県警の刑事で、「ガミさん」こと大上章吾が登場する。「~じゃろ」「~のう」など、地元色が濃い語尾は、地方の警察を舞台にした小説ならではの味わい深さがある。中国地方に住む義父に結婚の挨拶に行ったとき、この語尾にはビビった。

 大上は「わしは捜査のためなら、悪魔にでも魂を売り渡す男じゃ」とまでいうガラの悪さ。暴力団捜査に当たる警察官って、みんなガミさんみたいだと思われるかもしれないが、それは違うとフォローしたい。

 大阪府警で暴力団捜査に当たる捜査4課の取材を担当したことがあるが、大阪でいうところの「シュッ」とした感じの人は多いし、温和な表情の人もいた。

 まあ、ほかの課の取材を担当する同僚記者の中には、「4課の人って、ほかと雰囲気が違うから見分けがつく」という人もいたことは、内緒にしておく。

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