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【ダニーの棋食徒然】嫌われる以上に愛されて

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 茸(きのこ)は好き嫌いが多い食材といわれる。将棋界においても食事の注文で茸抜きというケースもあり、万人に愛される食材とは残念ながら言い難い。しかし、茸が多くの料理店のメニューに名を連ねていることは、嫌われている以上に愛されてきたことを立証するものだ。

 茸の中でも際立つ二種を表すことわざがある。「香り松茸(まつたけ)味しめじ」。最も薫り高く茸の王様としてそびえ立つ松茸と、味本位にして鍋の具材や炒めて供されるしめじをこの上なく表現しているといえ、物事にはそれぞれ長所があるというたとえ。この二種のうちでも、松茸は秋の味覚の王様とまで称されるほどである。

 松茸は8~10月を旬とする茸であり、日本では特に珍重される。松茸料理が多くの和食を扱う店で登場し始めるのは、もはや秋の訪れを告げる風物詩である。

 古くから愛されてきたことを示すように、松茸の調理法も数多くある。すき焼きに添えるなど鍋物に香りを足すために使われるもの、ホイル焼きなど松茸そのままを味わうもの、または炊き込みご飯のように何かと混ぜて供されるものなどが代表的である。その中でも、松茸そのものの香りをもっとも楽しむことができるのは、おそらく土瓶蒸しであろう。

 松茸の土瓶蒸しは出汁(だし)、松茸、そして少量の具というシンプルな作りだが、まさにその簡潔さによって、松茸そのものの香りと、出汁の旨(うま)みを心ゆくまで味わうことのできる料理である。一口飲めば、松茸の幸せな香りとともに出汁が体に染み渡る。

 深まりゆく秋、たまの贅沢(ぜいたく)に季節の香りと温かみを一杯に味わってみるのはいかがだろうか。(将棋棋士 糸谷哲郎八段)

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