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【バレーボール通信】清水邦広、大けがから全日本復帰 次世代に伝えたい思い

度重なる大けがから復帰し、W杯バレーでプレーする33歳の清水邦広。満身創痍の体でも戦う理由がある=5日、マリンメッセ福岡
度重なる大けがから復帰し、W杯バレーでプレーする33歳の清水邦広。満身創痍の体でも戦う理由がある=5日、マリンメッセ福岡

 絶望のふちからはい上がってきた背番号1を、マリンメッセ福岡(福岡市)の観衆は大声援で出迎えた。バレーボール男子ワールドカップ(W杯)で日本の開幕試合となった1日のイタリア戦。第1セット23-16で、度重なる大けがから全日本のコートに帰ってきた清水邦広(パナソニック)が、ワンポイントブロッカーとして投入された。石川祐希(パドバ)から託されたトスを相手ブロックの腕に当てて、技ありプレーで24点目をもぎとると、33歳はくしゃりと顔をほころばせた。

 「『お帰りなさい』とか、そういう言葉をかけてくれると、厳しい試練を乗り越えてよかったなと思うし、諦めずにやってきたからこそ戻ってこられた。本当にみなさんに感謝しながら、僕自身頑張ってよかったなと思います」

 20歳で代表入りしてから務めてきた攻撃専門のオポジット(セッター対角)の座は現在、19歳の西田有志(ジェイテクト)が主力。控えからのスタートが多くなったが、待機中も常に体を動かしながら万全の状態でコートに入れるように最善を尽くしている。

 2016年リオデジャネイロ五輪出場を逃してからの3年間は、これでもかというくらいの困難が襲いかかった。同年12月に右足首舟状骨の疲労骨折で10カ月のリハビリ生活。ようやく復帰した矢先の18年2月には、試合中にスパイクの着地で体勢を崩し、右膝(ひざ)前十字靭帯(じんたい)断裂、右内側側副靱帯断裂、半月板損傷の大けがを負った。約1年にわたるリハビリ中には、引退の二文字が頭をちらついた。

 ふさぎ込む清水のもとに、真っ先に駆けつけたのは同い年の盟友・福沢達哉(パナソニック)だった。「頑張ろうな」「帰ってこいよ」。福沢はそんな慰めの言葉は一切、口にしなかった。ただただ世間話に花を咲かせた。

 「バレーボールの話は抜きにしていろんな話をしていた中で、僕も本当に心が落ち着いてきたっていうか…。マイナスからプラスになれた気がした」

 大学4年の時、ともに最年少で08年北京五輪代表となった2人。「うれしいときも悔しいときも一緒に戦ってきたバレー人生だった。福沢がいるからこそ僕は頑張ってこれているし、福沢自身も僕がいるからこそ、いまこうやって戦い抜けていると思う」。折れかけた心に、再び火がともった。

 今年6月ごろから膝のテーピングを外し、ジャンプやスパイクの感覚は徐々に戻りつつある。ただ、日によっては階段の上り下りですら支障が出るときも。試合中もスパイクに踏み切る瞬間などは痛みが伴うが、「いまは痛みと付き合いながら、どうやってバレーボールをうまくなっていくかを考えながらやっています」。万全でない中でも、表情にはバレーボールができる喜びが見て取れる。

 最高到達点は345センチを優に超えていた全盛期から比べると、15センチほど落ちたという。最高の状態で打てることも少なく、常に打てる高さは今や320~315センチほど。相手ブロックを利用した打ち方や、守備の穴に落とすフェイント…。これまで以上に強打以外の点の取り方を意識するようになった。

 「いい状態であればここに抜きたいとか、ここにスパイクを落としたいと常に考えながらやっていた。今はトスが上がってきてから、いろんな状況を考えて、こういう場合だとこう点を取ろうと思考を瞬時に変えながらやっている」

 けがの巧妙で得た新たな武器を、W杯では存分に発揮している。ただ、「僕はオポジットなので逃げてばかりでは点は取れない」。現状に甘んじることなく、日々リハビリやトレーニングに向き合う。

 一方、日本の未来を背負う若手には、自らが経験から得た知識を惜しみなく授ける。W杯2戦目のポーランド戦でブロックに捕まった西田には「80%くらいに力を抜いてでも、自分の視野が広くなるように」と声を掛けた。3戦目のチュニジア戦でチーム最多の17得点を挙げた西田は「清水さんのアドバイスがあって自分のプレーがある」と感謝した。

 日本男子が最後に出場した08年北京五輪は、一勝も挙げられずに終わった。盛り上がりを見せていた大会前の熱は一瞬で冷めた。11年のW杯は2勝9敗の10位。ホームでありながらまばらな観客の入りに悔しさや危機感が募った。

 「負けているチームを応援したくなるスポーツって少ない。そういった意味では、どんな状況でも勝つことを意識しないといけない。それは今回のW杯だけではなく五輪も同じ。そこがバレー界の明暗が左右される分岐点だと思う」

 15年W杯は、石川や柳田将洋(ユナイテッド・バレーズ)らスター選手の登場もあって、日本は6位と健闘した。にわかに盛り上がる今のバレー界の熱を次世代につなぐためにも、結果が必要なことを誰よりも理解している。

 「命を削ってでも戦い抜きたいと思います。下の世代にも伝えながら、必死になって目の色を変えて戦い抜くことが大事」。東京五輪まで1年を切った。自身を育ててくれたバレーの未来のため、清水は残り少ない代表人生での完全燃焼を誓う。(運動部 川峯千尋)

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