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【最新電脳流行本事情】「恐怖」の作家ランキング ぷるるるるっと電話が鳴る

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 怒られそうだが、あえて言おう。暑い。エアコンという文明の利器が効いた屋内で過ごすのがいちばんではあるが、心を冷やすのであれば、背筋が凍るような本を読むという手法も悪くない。そこで「恐ろしい」「怖い」といった恐怖を連想するワードを含んだツイートから作家名を抽出。その作品を、氷菓をむさぼりながら読んでみた。そんなとき、職場の机の電話が突然鳴って…。(渡部圭介)

 ■意外な作家

 暑くなり始めた6月から7月末までの、読書感想とおぼしきツイートを基に作成した「怖い作家ランキング」は別表の通り。ちなみに、自作の解析プログラムを走らせるパソコンのリターンキーをたたいた後、京極夏彦さんが上位に入ったらどうしようかと思ったが、残念ながら?トップ10には入らず。内容に加え、そもそも本の分厚さが怖かったのです。

 一見すると、人が感じる「怖さ」はそれぞれだなぁ、という顔ぶれ。なかでも3位の伊坂幸太郎さんは意外だった。不思議なストーリーは多いが、そんなに怖いと思った作品が思いつかない。

 伊坂さんの名前を含むツイートをひとつひとつ見ていくと、4月刊行の『シーソーモンスター』(中央公論新社)に収録されている2編のうち、人工知能(AI)が発展を遂げた近未来が舞台の「スピンモンスター」に“支持”が集まっている。

 読んでみると、「平和警察」が住民を取り締まり、「危険人物」は衆人環視の下で処刑される世界を描いた伊坂さんの作品『火星に住むつもりかい?』(光文社文庫)を思い出した。ともに「監視」される社会の恐ろしさを描いてはいるが、背筋が凍るような話ではない。

 まあ、こういうノホホンとした生活を送りながらも、知らず知らず監視されているのであれば、怖いことだけれども。そして、もう1編の「シーソーモンスター」に出てくる嫁と姑の戦いも、ある意味怖い。

 ■避けていた澤村伊智

 1位の作家は澤村伊智(いち)さん。とても怖そうなので、読むのを避けていた作家だ。ツイートでは『恐怖小説キリカ』(講談社文庫)を取り上げるユーザーが多かったのだが、そのタイトルにビビってしまい、『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫)を読んでみる。なんかタイトルが愛らしいじゃない、という安直な思いは見事に裏切られる。

 幸せな新婚生活を送る田原秀樹の勤務先に、同僚が来客者を取り次ぐ。訪ねてきたのは女で、「チサさんのことで田原さんに用がある」と言っているという。しかし、田原が会社の1階に行ってみると女の姿はない。そもそも「チサ」は生まれる予定の娘に付けようとしていた名前で、誰も知るはずがない。

 すると、客を取り次いだ同僚は謎のけがで入院。田原の自宅には奇怪な電話があり、そこで小学生の頃、祖父母の家にやってきた訪問客のことを思い出す。

 「それが来たら、絶対答えたり、入れたらあかん」って言ってたじゃん!という突っ込みを忘れるくらい、ジワジワと来る。「ぷるるるる」という電話の呼び出し音の書き方など、怖い仕掛けが随所に練り込まれている。苦手なホラー映画「ポルターガイスト」を思い出しつつ、「でも、フィクションだから」と念じ続けることで恐怖は乗り越えられる。そう信じでもしないと、夜中トイレに行けない。

 ■ぷるるるる…

 2位の小野不由美さんといえば、『鬼談百景(きだんひゃっけい)』(角川文庫)が怖かった。タイトルの通り、現代の怪談話100編を集めた短編集は、どこの家にでもある情景にからんだ話も多い。わが家にもあるんだよなぁ、壁紙がはがれたところ。でも、ペリペリとめくってはいけない。だって、下地にあるのは…。「怪談100本ノック」の後に続く巻末の解説が稲川淳二さんって、そりゃないよ。

 7位の三津田信三(みつだしんぞう)さんの『どこの家にも怖いものはいる』(中公文庫)は、冒頭からかましてくる。

 「お願い 本書に掲載した五つの体験談について、執筆者ご本人またはご親族でご存じの方がおられましたら、中央公論新社の編集部までご連絡をいただければ幸いです」

 「キヨちゃん」が見えるという子供を持つ母親の日記だったり、ある少年の語りだったり。無関係に思える5つの短編は、あるキーワードで重なっていく。参考文献も不気味という念の入れよう。これ、どこまで本当の話なのでしょうか。

 芹沢央(よう)さんの『火のないところに煙は』(新潮社)も似た構成だが、こちらは「著者」の実体験風。「人と人との間に相性があるように、怪異と人との間にも相性があるんですよ」と言うのだが、金縛りにあった際、ときどき枕元に、おじさんが座っているのが見える私はどうしたらのいいのでしょうか。

 背筋に冷たいものを感じながら原稿を書いていると、不気味な本を雑然と積み上げた職場の机の電話が突然鳴る。

 ぷるるるる

 思わず「ひぇっ」と声を上げ、恐る恐る受話器を取る。

 〈オカダですぅ、デスクいてはります?〉

 先輩記者からであった。いつもいつも、デスク席直通の電話にかけてほしいといういらだちは忘れ、オカダさんの声を初めていとおしいと感じた。ぼぎわんではなく、本当に良かった。

 調査方法 ツイッターで6~7月に発信された読書感想とおぼしきツイート約48万8千件の中から、「恐怖」などのフレーズを含む約8千件のツイートを抽出。文中に含まれる作家名をカウントした。

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