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【正論9月号】激動の国際情勢 日米安保の改定で「適者生存」目指せ 国家基本問題研究所主任研究員 湯浅博

 折しも、ロシアのプーチン大統領が「民主主義の終わり」をシニカルに語り、中国の習近平国家主席が社会主義統治モデルの拡散を夢見て、中国を頂点とする「華夷秩序の旗」を掲げようとしている。これら大国と海を隔てて向かい合う日本は、日米同盟の揺らぎにどう応え、地域の安全保障をどう確保すべきなのか。安倍政権はこれら大国の「強者生存」路線をかわしつつ、変化するアメリカとの同盟に適応する「適者生存」の道を探ることであろう。

 日米安保軽視の米大使解任 過去を振り返れば1996年9月、当時のモンデール駐日大使がニューヨーク・タイムズ紙上で、沖縄県の尖閣諸島に関する無知蒙昧なる発言をした。浅はかにも彼は、「アメリカ軍は安保条約によって介入する義務はない」「尖閣の地位は防衛条約が存在しない台湾の地位と似ている」と、日米安保条約がもつ対中抑止力を無視した。

 確かに日米安保条約の第5条は、NATO(北大西洋条約機構)条約第5条のような防衛義務を定めたものではない。日米条約はいずれか一方に対する武力攻撃に「自国の憲法上の規定および手続きに従って、共通の危険に対処する」ことを宣言している。NATO条約のように軍事力をもって「直ちに被攻撃国を援助する」とは、同じ第5条でも大違いだ。たとえ、中国による日本への攻撃があっても、その攻撃がアメリカの安全を脅かしていると認識し、憲法に則して行動することをうたっているのである。

 だからこそ、アメリカ政府高官は繰り返し「尖閣諸島に対する第5条の適用」を表明することで、対中抑止の強力な意思を確認しているのだ。あのモンデール大使の発言を当時の橋本龍太郎首相は聞き流したが、すでに国会議員を引退していた石原慎太郎氏は1996年11月の産経新聞「正論」欄で即時、反撃した。「シナを気にする余り不用意にこの発言をしたとしたなら外交官としては不適格としかいいようがなく、その発言の責任をとる必要がある」

 これを深刻に受け止めてか、ワシントンはまもなくモンデール大使を更迭した。駐日大使の発言なら「解任」によって事なきを得ることができる。だが、発言の主が最高司令官であるアメリカ大統領であるとしたら、ことは相当に深刻である。日本人が漠然ともつ対米依存心を、アメリカ大統領が自ら1度ならず、2度、3度と波状攻撃を加えてきているからである。

■大統領が抱く不公平感

 まず、トランプ大統領が私的会話で日米安保条約の破棄の可能性に言及したと6月24日のブルームバーグ通信が報じた。続く26日には、FOXテレビとの電話インタビューで、「日本が攻撃されれば、われわれは第三次世界大戦を戦うことになり、あらゆる犠牲を払っても日本を守る。しかし、アメリカが攻撃されても、日本は我々を助ける必要がまったくない。彼らはソニーのテレビでその攻撃を見ていられる」と述べた。続いて大統領は20カ国・地域(G20)大阪サミット後の記者会見で、さすがに「安保破棄」は言わなかったものの「条約の不公平さ」には改めて文句を言った。

 このトランプ発言は、かねて言及してきた「日本の安保タダ乗り論」であり、大統領選向けに「またぞろ持ち出してきた」というのが大方の受け止め方であった。実際に、経済人としてのトランプ氏は1987年9月2日付のニューヨーク・タイムズ紙など米主要紙に意見広告を出し、「数十年にわたり、日本や他国はアメリカを出し抜いてきた。彼らは石油に依存しているが、我々にはそれほどでもないペルシャ湾を守った後でもこの状況が続いている」と憎々しげに表明している。そのうえで彼は、「日本や他国への貿易赤字を止め、彼らに払うべきコストを負担させるべきだ」と結論づけていた。

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