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2020年、東京上空に浮かぶ「誰かの顔」 五輪へユニークプロジェクト

「まさゆめ」のイメージ画像 ©目[mé]
「まさゆめ」のイメージ画像 ©目[mé]

 2020年東京の空に浮かぶ顔、募集-。こんな不思議な呼びかけに、世界中から1000人を超える老若男女が応じた。選ばれるのはその中のたったひとりの顔。6月下旬には、どんな顔が浮かぶべきかを話し合う「顔会議」も開催された。え、意味がわからない? 企画した現代アートチーム、目(め)/[me]に狙いを聞いた。(文化部 黒沢綾子)

 想像してみよう。東京五輪・パラリンピックが開かれる来年の夏、誰かの巨大な顔が東京の空に浮かぶ光景を。

 企画名は「まさゆめ」で、東京都とアーツカウンシル東京(東京都歴史文化財団)が主催。東京五輪・パラリンピックに向けた文化プロジェクト「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の企画公募事業の一つに選ばれた、いたって真面目な計画なのだ。

 企画者の目/[me]は現代美術家の荒神明香(こうじん・はるか)さん、ディレクターの南川憲二さん、制作担当の増井宏文さんの3人組。荒神さんが中学生の頃に見た「空にまるで月のように人間の顔が『ぽっ』と浮かんでいる夢」から着想したという。

大きな謎追う

 実は、3人が空に顔を浮かべるのは今回が初めてではなく、4年半前には美術館のプロジェクトとして、宇都宮の空に「おじさんの顔」を浮かべた。地元に実在するが、大半の市民にとっては「知らない男性の顔」が、見上げた空に突如現れる。その奇妙な光景は、海外メディアも配信するなど話題になった。

 宇都宮の場合はアートを美術館の外へ、街の中へと広げる試みの一環だったが、荒神さんは「空を見ようと高齢者施設からお年寄りがたくさん出てきたり、街のあちこちで見物人が集まったりといろんなことが起きた」と振り返る。「美術に関係なく、大きな謎のようなものを皆で追いかけているようだった。誰しも何らかの謎を追っていると思うけれど、その体験を共有する。五輪でたくさんの人が集まる機会にぴったりの企画では、と思った」

 ちなみに空に顔を映写するのではなく、巨大な立体物を実際に浮かべる。「東京ではもっと大きく、精度も上げたい」と制作担当の増井さんは意気込む。

 「まさゆめ」では顔を公式ウェブサイトを通じて世界中に募集したほか、都内と千葉県の十数カ所で、街行く人々に顔の撮影を募る「顔収集ワークショップ」も実施。3月下旬から6月末までの募集期間に、国内外の1000人以上の顔が集まったという。

「顔会議」開く

 最終的にひとりの顔を決めるのは荒神さんだが、どんな顔を選ぶべきかを話し合うのが「顔会議」だ。6月下旬に都内で開かれ、目/[me]の3人のほか、「顔学」の権威である原島博・東大特任教授と法廷画家の宮脇周作さんが登壇。一般参加者も、膨大な数の応募者の顔(どこの誰かは一切わからない)を見ながら真剣に意見交換をした。

 「空を見上げて、一日の疲れが軽くなるような顔がいい」「五輪だから外国人がふさわしい」「お天道様が見てると言うけれど、その顔が浮かぶことで犯罪率が下がるといいな」。老若男女、国や肌の色、喜怒哀楽の表情…。当然ながら結論など出ない。5時間に及ぶ会議の末、多くの人が口から漏れたのは「どの人も空に上がっていい気がする」。投げやりではなく、心底そう思えたからだ。

問われる「個」

 ディレクターの南川さんはこの企画を通して「個」と「公」のあり方を考えたかったと話す。「1964年の東京オリンピックは発展という大きな物語を背景に、『公』の力で進められたけれど、2020年の『公』は『個』の集合でできている。つまり個々が問われる。まさゆめはアーティスト個人の夢に始まり、空に上げるのもまた、個人。それをわれわれは許容できるのかと。五輪の成否も、その後の社会も、個々にかかっていると思う」

 荒神さんは「皆さんからのヒントを胸に、真剣に向き合って決めたい」と覚悟を語る。答えは1年後、東京の空に浮かぶはずだ。

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