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【高論卓説】漁師志望者に「アキバ」の若者 養殖シフトで薄れる3Kイメージ 平松庚三

養殖いけすから釣り上げられた「近大マグロ」=3月9日、和歌山県串本町沖
養殖いけすから釣り上げられた「近大マグロ」=3月9日、和歌山県串本町沖

 今、アキバ(東京・秋葉原)で漁師になりたい若者がよく釣れる、という嘘のような本当の話がある。

 漁師といえば、「きつい、汚い、危険」の3Kの代表職業だから、大都会の軟弱若者には絶対無理だと思っていたが、それがなぜ。東京で今年開かれた漁業就業支援フェアには、412人が会場を訪れ関係者を驚かせた。前年の2倍だそうだ。しかも30歳以下の若者が圧倒的に多かったそうだ。何が彼らを漁業への就業に引き付けたのか。

 漁業には主に遠洋漁業、沿岸漁業、養殖漁業がある。魚を追って海に出る。暗い早朝や深夜に船上で網を引く、嵐に遭遇する、漁師の職場は厳しく危険がいっぱいだ。が、近年資源確保の観念から漁法を「獲る漁業」から「育てる漁業」に大きくシフトさせており、今日では日本全体の漁獲高の3分の1が養殖で賄われている。養殖であれば長い間家を空けることもない、嵐に遭遇する危険性も少ない。つまり、3Kのうち1Kが消えたのだ。通勤できる漁業、これが若者の興味を引いたのか。

 四方を海に囲まれ、目の前で黒潮と親潮がぶつかる日本は世界でも有数の好漁場を持つ漁業大国だ。だが今の日本の水産業は極めて深刻な大きな問題を抱えている。漁業大国とはいえ、過去7年間に全国の漁師の数は22万人から16万人に減少した。しかも現在の16万人の半分が60歳以上の高齢者という現実。人手不足と高齢化。この問題を解決し、日本漁業を守るには外国からの労働力に頼らざるを得ない。

 広島県のように、過去10年間で若手漁師の過半数が外国人労働者になった地域もある。広島県ばかりでない。今の日本の漁業は外国人漁師で成り立っている。外国人労働者を受け入れることは別に悪いことではないが、海洋国・日本の伝統産業を「外国人に丸投げ」することには疑問が残る。

 そこに、今回の「アキバ海域に漁師志望者の大群発見」のニュースだ。だが、大都会で育った若者がリスクの少ない通勤漁業の可能性だけで本当に海を目指すのだろうか。彼らはみんなスマートフォンっ子だ。かつては遠い世界であった海も、漁師の仕事も、海の男たちのライフスタイルでさえ、彼らはインターネットで簡単に情報を入手する。漁船での漁労状況も漁港での作業も全て、動画でチェック済みだ。

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