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「命あるうちに道筋を」高齢化する北方領土元島民、募る焦りと望郷

色丹島を見渡す高台に立つ元島民、得能宏さん(中央)=7月14日(千島歯舞諸島居住者連盟提供)
色丹島を見渡す高台に立つ元島民、得能宏さん(中央)=7月14日(千島歯舞諸島居住者連盟提供)
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 先の大戦直後に旧ソ連が侵攻し、現在もロシアが不法占拠する北方領土。近年になり安倍晋三首相が「新しいアプローチ」に言及したことで日露交渉進展の可能性が浮上し、日本政府が四島返還から二島返還に方針転換したとの観測も出たが、これまでに具体的な動きはない。21日に投開票された参院選でも、領土や外交問題の主張は低調だった。「命あるうち解決の道筋を示し、実現してほしい」。帰還を待ち続ける元島民の願いは募るが、高齢化が進み、鬼籍に入った人も多い。残された時間はわずかだ。(中村昌史)

 「故郷を訪れるたび懐かしさ、切なさが募ります」

 北方四島の一つ、色丹(しこたん)島で生まれ育った得能(とくのう)宏さん(85)は、しみじみと語る。定期的に北方領土を訪問し、7月12日から連休にかけて自由訪問に参加。かつて暮らした島内をめぐった。

 11歳だった終戦後の昭和20年9月、ソ連の軍艦2隻が突然、島付近に現れた。銃剣を付けたライフルなどで武装した兵士が次々と上陸し、民家を遅い金品を奪うなど、乱暴の限りを尽くした。家は没収され、追い出された島民は、物置や知人の家に間借りした。

 避難する間もなく侵攻され、島民はソ連人とともに暮らすことになった。ソ連軍の監視下で自由が制限される日々が続く一方、得能さんはソ連人の子供と同じ教室で学び、交流も生まれた。特異な体験は北方領土の経緯を描いた平成26年公開のアニメ映画「ジョバンニの島」の主人公のモデルとなり、反響を呼んだ。

 侵攻から2年後、ソ連から島を追われて北海道に移住するまで、樺太の収容所で「飢え死に寸前の生き地獄」を味わった。「島を侵攻し、蹂躙(じゅうりん)したことは絶対許せない。同時に、故郷や生活を奪われる辛苦も痛いほど分かる」。島の返還をめぐり、複雑な思いを抱いている。

 1991(平成3)年にソ連が崩壊しロシアとなり、翌年から「ビザなし交流」が始まると、北海道根室市に暮らしていた得能さんも、第一陣として故郷を訪問した。「外交交渉は難航しているが、民間交流や相互理解は着実に進んできた」と手応えを語る。

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