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【経済インサイド】「世界に1000軒」HIS社長の野望の一歩に立ちはだかる壁

ユニゾホールディングスの株式公開買い付けを発表するエイチ・アイ・エスの沢田秀雄会長兼社長(中央)=10日、東京都中央区
ユニゾホールディングスの株式公開買い付けを発表するエイチ・アイ・エスの沢田秀雄会長兼社長(中央)=10日、東京都中央区

 格安の海外旅行を日本人に広めたことで知られるエイチ・アイ・エス(HIS)の沢田秀雄会長兼社長が、「ホテルを世界に1000軒」建設する構想をぶち上げた。ただ、国内100軒のために踏み切った、ホテル・不動産業のユニゾホールディングス(東証1部上場、ユニゾ)へのTOB(株式公開買い付け)は、敵対的TOBに発展する公算となり、思わぬ誤算となっている。

 「3年以内に国内100軒。その次は世界で1000軒構想がある」。HISが7月10日に開いたユニゾへのTOB実施を表明する記者会見で、沢田氏はこう述べて、ホテル事業を次の事業の柱にする考えを強調した。

 HISといえば、ロボットがフロントで客を出迎える「変なホテル」を世に送り出した。最寄り駅から徒歩5分圏内という好立地や、人件費を削減した新たなビジネスモデルを武器に、全国16カ所で展開している。ユニゾとの提携をテコに海外進出を本格化させる構えだ。

 HISの資料や国内ホテルチェーン各社のホームページなどによると、国内のホテル軒数首位はアパホテルの500軒超で、ルートインホテルズ、東横インと続く。「ユニゾの不動産情報ネットワークや建設管理のノウハウを活用して不動産事業を拡大することで、国内100軒構想が視野に入る」(HISの中谷茂取締役)

 HISがユニゾを重視した理由がこの不動産情報ネットワークで、中谷氏は「(HISは)用地の仕入れや活用の仕方など、どうコストを考えるのかはまだ経験が浅い。(ユニゾは)不動産マネジメントや建設のノウハウをお持ちだ」と説明した。

 沢田氏はHISが旅行商品で時期などに応じて料金を上げ下げして利益の最大化を目指す、イールドコントロールのノウハウをホテル運営にも応用する考え。「うちのイールドコントロールをホテル運営に足すと、両社がお互いにより良くなると信じているので、思い切ってTOBを取らせていただいた」と述べた。HISの旅行者をユニゾのホテルに送客することで稼働率上昇が見込める、といったメリットも強調した。

 また、ユニゾの株価が会見した10日時点では割安なこともTOBの理由とみられる。ユニゾの株価純資産倍率(PBR)は0・7倍で、割安とされる目安の1倍を割り込んでいる。

 一方、ユニゾ側はこうしたHISの熱意には冷淡だったという。HISは平成26年ごろからホテルと不動産事業拡大のためにM&A(企業の合併・買収)や資本業務提携を強化する相手を模索。昨年9月ごろにはユニゾをベストパートナーと考え、業務提携を打診したが進展しなかった。

 HISはその後、今年4月下旬までにユニゾ株式を取得して保有割合約5%の筆頭株主となった。それでも具体的な協議の機会はなかったという。HISの沢田氏は「協業するとプラスになる。われわれは敵対的ではない」と強調する。

 しかし、ユニゾは10日のHISの記者会見後、「当社に対して何の連絡もなく一方的かつ突然に行われたものだ」とのコメントを発表。社外取締役5人で構成する特別委員会を設置し、委員会の答申を基に、今月26日までにTOBへの賛否を取締役会で決める。8月23日のTOB期限まで、沢田氏の構想の実現は余談を許さない状況だ。

 HISが、これまでの両社の関係を悪化しかねないTOBに踏み切った背景には、主力の旅行事業が好調なうちに次の柱を探す必要性に駆られているからだ。

 旅行事業は30年10月期決算で売上高、営業利益ともに前期比20%以上のプラスだった。ただ、旅行事業の売上高営業利益率は約2%程度と低い水準。インターネットの旅行会社の台頭もあって、沢田氏は「あくまでメインは旅行だが、次の収益源として不動産、ホテル、金融などいろんな柱を育てる準備をしている」と述べた。

 沢田氏はHISが旅行業界の大手になる前は、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と並んでベンチャーの雄として知られた。現時点で国内30軒程度という時点で「世界1000軒構想」を表明するのは、孫氏ばりの大ぼらとも映る。

 世界のホテル業界では5000軒を超す企業も少なくない。沢田氏は「世界では四ツ星、五つ星を目指したい。トルコ、ベトナム、ロンドン、ニューヨークの計画を進めている」と具体的な計画まで説明したが、現時点では世界展開の成功の始めの一歩といえる、ユニゾへのTOBの成否に市場からの注目も高まっている。(経済本部 大坪玲央)

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