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【高論卓説】大型クルーズ船、日本列島を席巻 五輪に花添える 田部康喜

初寄港したクルーズ船を歓迎する関係者ら=2019年5月、松山市
初寄港したクルーズ船を歓迎する関係者ら=2019年5月、松山市

 東京・晴海の勝どき桟橋を離れた、100人乗りの小型クルーズ船は、東京湾の出口に向かってゆったりと進んだ。レインボーブリッジをくぐり抜けると、左手に東京五輪・パラリンピックの選手村になる高層マンションの工事現場が見える。

 さらに、南極観測船「宗谷」の展示で知られる「船の科学館」の近くで、東京国際クルーズターミナルが令和2(2020)年7月開業する。9月に大型クルーズ客船「クイーン・エリザベス」を第1号として迎える準備が進んでいる。世界的なクルーズ船の大型化によって、レインボーブリッジをくぐり抜けることができないために新設される。

 政府は、訪日外国人について、2年に4000万人の目標を掲げる。このうち、クルーズによる旅客数を500万人と見込んでいる。国土交通省によると、旅客定員が2000人から2500人にも及ぶ9万トン級の新造の大型クルーズ船は、世界で2019年までに計31隻が建造され、このうちの6割近くがアジアの領域で運航する。

 新たな国際船ターミナルに着岸した大型船からみれば、夕日に浮かび上がる東京の高層ビル街を遠景として、ライトアップしたレインボーブリッジの近景が溶け合って、これまでにない国際都市・東京の新たなイメージとなる。

 「世界からこれほど多くのお客さまをお迎えするのは初めてでしょう」

 昭和39(1964)年東京五輪の記録映画(市川崑監督)の中で、羽田空港に降り立つ各国の選手団を映しだして、三国一朗氏のナレーションは、どこか誇らしげである。

 政府観光局の統計によると、39年の訪日外国人は実はわずか約35万2000人である。100万人を超えたのは52年、1000万人を超えたのは平成25年のことである。世界的な航空網の発展に加えて、東京オリンピック・パラリンピックは、海路の訪日外国人ブームが起きる。

 大手旅行代理店が6月中旬に開いた、クルーズ旅行の説明会に参加してみた。大型外国船で外国人も含めて、日本各地を周遊するか、これに韓国あるいは台湾、香港などを加えたコースがある。主催者が50人ほどの参加者にクルーズの経験を尋ねたところと、ほとんどが未経験だった。出発地は横浜と神戸である。客室のランクによって、1人当たりの料金は大きく変わるが、3食付きで宿泊ができることを考えれば、妥当なところだった。各地を周遊するのに、鉄道や航空機の乗り換えがいらないのも魅力だ。

 国交省によると、31年に国内の港のクルーズ船の来航数は5年前の3倍近い2928回だった。港湾別では、博多を筆頭に那覇、長崎、横浜、平良、神戸など西日本の港が多く並ぶ。大型拠点となる、東京国際クルーズターミナルが完成すれば、クルーズ船の航路が東日本により延びることだろう。

 横浜・山下埠頭(ふとう)の港湾事業者による「横浜港ハーバーリゾート協会」は7月1日、クルーズ船が発着する港の整備を中心として、国際展示場や高級ホテルを設ける構想を発表した。横浜市がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を進めているに対して、この構想にカジノはない。クルーズ船の時代は、都市間競争にも波及効果をもたらしている。

【プロフィル】

たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。福島県出身。 

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