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降旗康男監督を悼む 撮影監督、木村大作さん(上)「取り残された」

死去した降旗康男さん
死去した降旗康男さん

 映画監督、降旗(ふるはた)康男さんが5月20日、84歳で亡くなった。「駅 STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」など多くの作品で撮影監督を務めたカメラマンの木村大作さん(79)が、40年にわたる交流を振り返りながら敬愛する“降(ふる)”さんを悼む。(聞き手 文化部 石井健)

2月の喫茶店

 「今年の2月にね、新しい映画の企画の話をした。降旗康男監督でカメラは木村大作だ。降旗さんは『大ちゃん頼むね』と言ってたな。ただ、この企画は、その後、すぐに流れちゃったんだけどね」

 〈木村さんは、昭和35年、東宝にカメラ助手として入社。黒澤明監督の組(撮影班)に配属された。「日本一のフォーカスマン(撮影助手)」と称され、東宝から独立した後も黒澤監督から参加を請われた。48年に撮影監督となり、森谷司郎監督、深作欣二監督、そして降旗康男監督ら名匠の作品で腕をふるった〉

 --そのとき降旗監督は、お元気だった

 「元気だったよ。だって、渋谷の喫茶店まで来たんだから」

 --いつもその喫茶店で打ち合わせを

 「いや、その日、たまたまそこだったんだ。降旗さんは打ち合わせの後、酒も飲みたそうだったな。だけど『きょうはもう帰ります』と帰っていった。具合が悪そうには見えなかったよ。お互い老いたなとは思っていたが、病気が進行しているなんて全く分からなかった。あれから3カ月もしないで亡くなってしまった」

残念無念

 〈木村さんが降旗監督の訃報に接したのは、5月24日だった〉

 「映画関係者から電話があった。葬儀をご家族で済ませた後。周りに迷惑がかかるから、亡くなったことは知らせるなと、ご本人が言っていたらしい。降旗さんは、よく『亡くなったら、何もなくなるんだよ』って言っていた」

 --訃報に接して

 「最初に湧いた思いは、“残念無念”だったね。僕のことをカメラマンに指名する映画監督なんて、もういないんだよね。降旗さんだけは、いつだって『大ちゃん頼むね』と。そういう人を失うのは残念無念だよね。われわれは映画を作ることだけが生きがいなんだからさ」

 --「大ちゃん頼むね」と

 「そう。僕は『はい、分かりました!』って先頭に立って物事を進める。それを降旗さんや高倉健さんが見守る。僕らは、チームだった。そういう人たちがいなくなったら、がっかりしちゃうよね。残念無念っていうのは、そういう気持ちなんだ」

お別れ

 「亡くなられたという連絡をもらってから、降旗さんの携帯電話にかけてみたら、お嬢さんが出た。『父をしのぶのでしたら、みなさんで酒盛りの会でもやってください』って笑っていた。降旗さんは、お酒、好きだったからね」

 --酒盛り…

 「酒盛りの会、8月ぐらいにやるつもり。どういう規模になるか分かりませんが。降旗さんは、スタッフに慕われていた。あんなに慕われた監督は、ほかにいないんじゃないかな。“降旗組”に参加したいと言っていた人も多かった。そういう人たちから『悼んで集まる機会はないのですか』と問われていたし」

 --なるほど

 「自分の気持ちに区切りもつけたい。ご本人の思いも分かるけど、お別れをする機会がないと、残された方が困るなあというのが僕の実感。健さんのときもそうだった」

健さん

 〈降旗監督と木村さんは、高倉健さん主演の「駅 STATION」(昭和56年)で初めて顔を合わせた。木村さんは、高倉さん主演の「八甲田山」(森谷司郎監督、52年)にカメラマンとして参加。その縁で、健さんが「駅-」で木村さんを指名した。以降、降旗&木村コンビは、健さん主演映画を撮り続ける〉

 「降旗監督、カメラ・木村大作のコンビで16本撮った。そのうち高倉健主演作が7本。『駅-』の準備段階からだから、降旗さんとは40年以上の付き合いになる。取り残されたっていう感じ」

 〈健さんの遺作「あなたへ」(平成24年)も降旗監督が撮ったが、木村さんは不参加。吉永小百合さんの「北のカナリアたち」(阪本順治監督、同年)を撮影していた。降旗監督と木村さんは、「あなたへ」に続く健さん主演作「風に吹かれて」も準備した。脚本が完成し、撮影を始めようかという26年春、健さんは降旗さんらに「ちょっと、検査入院してくる」と告げたまま同年11月、帰らぬ人となった〉

 「健さんと降旗さんは、20本以上やったわけだからね。あの2人の関係は深過ぎて僕らには理解できないが、そこの一員に僕がいられたことが、自分の映画史の中では大きい」

 〈木村さんは、降旗さんを「降さん」と呼んだ。「60歳を過ぎてからだな」という。降旗さんは、会って間もなくから木村さんを「大ちゃん」と呼んだ。5歳上の降旗さんは、木村さんにとって「兄貴のような存在だった」。(下)では、大ちゃんが、降さんの仕事ぶりや人柄を振り返る〉=(下)に続く

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