PR

ニュース プレミアム

【政治デスクノート】昭和、平成、令和の長期政権 キーワードでたどる対米外交

日の出山荘にレーガン米大統領を招待した中曽根康弘首相=昭和58年11月、東京都日の出町
日の出山荘にレーガン米大統領を招待した中曽根康弘首相=昭和58年11月、東京都日の出町
その他の写真を見る(1/5枚)

 安倍晋三首相は、強烈な個性を放ち過激な発言を繰り返すトランプ米大統領と手を携え、日米の結束をより高い水準に引き上げてきた。だが、たとえ同盟国でも国益を測る尺度は異なる。これは昭和、平成、そして令和の時代も変わらない。戦後、長期政権を築いた歴代首相は、唯一無二の同盟国の大統領といかに正対してきたのか。

日米のバッテリー

 「あなたは議長だからピッチャーをやれ。私はキャッチャーになるよ。ピッチャーはキャッチャーのいうことを聞かないといけない」

 昭和58年、米ウィリアムズバーグの主要国首脳会議(サミット)の会議前、当時の中曽根康弘首相(57年11月27日~62年11月6日、通算在職日数1806日)は、レーガン米大統領にこう語りかけた。

 中曽根氏の長男で元外相の弘文氏は今年5月30日の会合で、このエピソードを披露した。弘文氏は、ソ連の中距離核ミサイルSS20をめぐり、日米首脳が「ぴったり息があった形で会議を進行した」とも紹介した。そのうえで、今月28、29日に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で議長を務める安倍首相とトランプ氏の協力に期待を示した。

運命共同体と不沈空母

 中曽根政権のスタート時、日米関係は冷え切っていた。前任の鈴木善幸元首相は日米安全保障条約に軍事的協力は含まれないと発言し、米国が極度の対日不信に陥っていたからだ。

 中曽根氏は首相就任直後の58年1月に訪米し、首脳会談で「日米は太平洋を挟む運命共同体」と発言。米紙社主との朝食会では「日本列島を不沈空母のように強力に防衛する」と述べた。当時は同月20日付産経新聞も「日本を対ソ『不沈空母』に」と伝え、批判的な意見が目立った。

 中曽根氏は著書「自省録」で「当面の私の課題はアメリカの対日不信を解消することにありましたから、大して気にしませんでした」と振り返る。中曽根氏はレーガン氏と「ロン」「ヤス」と呼び合う個人的関係を確立し、日米の結束を強めた。

Sオペ

 佐藤栄作元首相(39年11月9日~47年7月7日、通算在職日数2798日)は功績の一つに沖縄返還が挙げられる。佐藤氏が那覇空港で沖縄の本土復帰に取り組むと表明したのは40年8月。当時の産経新聞によると、佐藤氏は「沖縄の本土復帰が実現しなければ、戦後は終わったとはいえない」と言明した。実際に米国と合意できたのはそれから4年余り後のことだ。

 佐藤政権の原動力となったのが「佐藤オペレーション(略称=Sオペ)」と呼ばれた政策集団だ。産経新聞政治部次長を経て佐藤氏の首席秘書官を務めた楠田實(くすだ・みのる)氏が中心的役割を担い、長期政権の柱となった。佐藤氏の密使として水面下の対米交渉を担った国際政治学者、若泉敬氏の存在も大きい。

2度の「ショック」

 44年11月20日付産経新聞に「沖縄、72年返還きまる」と大見出しが踊った。佐藤氏とニクソン米大統領がワシントンで会談し、沖縄を47(1972)年中に日本に返還することで基本的に合意したと伝えている。紙面には両氏が満面の笑みを浮かべている写真が添えられている。だが、この2年後、佐藤氏は2度の「ニクソン・ショック」に襲われる。

 一つは46年7月、ニクソン氏が当時国交のない中華人民共和国(中国)を訪問すると宣言した「ニクソン・ショック」で、もう一方は同8月に突然発表されたドルと金の兌換(だかん)停止だ。いずれも日本のみならず世界に衝撃を与えた。日米関係は一筋縄ではいかない。

「テロとの戦い」

 小泉純一郎元首相(平成13年4月26日~18年9月26日、通算在職日数1980日)も当時のブッシュ米大統領と蜜月関係を築いた。

 13年9月、米中枢同時テロが起きると、ブッシュ氏が「テロとの戦い」を宣言。小泉氏はこれに呼応し、明確に支持を表明した。小泉氏は訪米した際、歌手のエルビス・プレスリーのものまねを披露して笑いを誘うなど両氏の個人的関係を印象づけた。

 14年には小泉氏が北朝鮮に乗り込み、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長と会談。拉致被害者5人を帰国させた。この背景には、ブッシュ氏が「悪の枢軸」と批判する対北圧力があった。

「ドナルド」「シンゾー」

 長期政権を築いた歴代首相は対米外交を軸に、外交成果を上げてきた。安倍首相(18年9月26日~19年9月26日、24年12月26日~)もその一人だ。

 安倍首相は政権復帰から北朝鮮と拉致問題、ロシアと北方領土返還をめぐる交渉に臨んできた。いずれも米国が大事なピースとなる。米国のカウンターパートはオバマ氏からトランプ氏に代わり、首相はトランプ氏と「ドナルド」「シンゾー」と呼び合うほど個人的関係を強めてきた。

 首相はロシアのプーチン大統領とも個人的な関係を築き、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とは条件をつけずに会談する意向を表明している。金氏との会談で一歩踏み込んだ姿勢を示したのは、トランプ氏が2月の米朝首脳会談で拉致問題を2度も提起し、その際の金氏の対応を細かく聞いたことがきっかけにもなった。

 いずれの外交課題も歴代政権が挑み、はね返されてきた。ただ、安倍首相は長期政権を築き得たからこそ、課題を解決する好機も見える。安倍首相自身が公言するように、政治は結果だ。歴史に残る外交的成果を残すことができるのか。

(政治部次長 峯匡孝)

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ