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新作は大伴家持 里中満智子「令和」に込める思い

漫画家の里中満智子さん
漫画家の里中満智子さん
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 中学生の頃から万葉集に心ひかれてきたという漫画家の里中満智子さん(71)。思い入れのある万葉集が新元号「令和」の出典となったことを心から喜ぶ。現在、持統天皇を主人公とする代表作『天上の虹』に万葉集をちりばめ、万葉集編者の一人である大伴家持(おおとものやかもち)を執筆中だ。日本最古の歌集は、「男女や身分の区分なく編纂された世界に誇れる文化遺産」と語る。(横山由紀子)

 4月1日。里中さんは新元号発表の報を移動の新幹線の中で知った。「万葉集からの出典と知り、本当にうれしかった」。平成になる前から、元号が日本の古典から引用されることを期待してきたが、「万葉集は万葉仮名が当て字だし、特定の歌の作者をたたえることになるので無理だろうな。日本の歴史書である日本書紀や古事記が順当だろう」と思っていた。

 それが願ってもない万葉集からの出典、引用は梅花(うめのはな)の歌32首の序文。漢文体で、作者は未詳だ。「その手があったのかとびっくりしました。いろいろと考えられたのでしょうね」

 《初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香

(初春の令月にして、気淑(きよ)く風和ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす)

 新春、九州・大宰府に赴任していた万葉歌人・大伴旅人の邸宅で開かれた香(かぐわ)しい梅花の宴。そこにつどった人々は、思い思いの歌を残した。

 華やかな宴のイメージだが、里中さんは宴の主催者である旅人の当時の状況に注目する。彼は中央政治から離れた大宰府に赴任し、妻を亡くすという試練にも見舞われていた。「苦しい中から見えてきた春。心機一転、新しい年に美しい梅を愛でて清らかな気持ちになろうという宴。そんな背景からとられた元号は、素晴らしいですね」

   ■   ■

 さまざまな万葉の歌を取り上げた漫画『天上の虹』は、昭和58(1983)年に少女漫画雑誌で連載を始めた。32年間に及んだ大作は、平成27(2015)年に完結。ちょうど執筆が終わる頃、新元号の考案者といわれる国文学者の中西進さんから、「次は、大伴家持を描いてほしい」と持ち掛けられた。家持は旅人の息子で、万葉集編者の一人。里中さんは作品で万葉集を取り上げてきただけに、功労者である家持に敬意を示したい思いもあり、漫画『言霊(ことだま)の人 大伴家持』の構想が決まった。

 また、家持の歌をめぐる世の中の誤解を正したい気持ちもあった。「海ゆかば…」と詠んだ歌。楽曲の歌詞となったことで、先の大戦で軍国主義の象徴のようにとらえられた。「天皇に忠誠を誓う歌が、戦争賛美の歌として誤解されているのが悲しいのです」と訴えたところ、中西さんも「そうそうそう」と同じ思いだったという。

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