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三島賞・山本賞射止めた女性2人は好対照 「眠れない夜に、ふと賞があればなあと」

「平場の月」で山本周五郎賞に選ばれた朝倉かすみさん=15日、東京都港区(飯田英男撮影)
「平場の月」で山本周五郎賞に選ばれた朝倉かすみさん=15日、東京都港区(飯田英男撮影)
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 第32回三島由紀夫賞、同山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)にはキャリアが好対照な女性2人が選ばれた。三島賞は昨年の新潮新人賞を受けた三国美千子さん(40)のデビュー作「いかれころ」(「新潮」平成30年11月号)で、山本賞は作家生活が約15年になる朝倉かすみさん(58)の『平場の月』(光文社)。15日の受賞会見でそれぞれに思いを語った。

 「夢のような気持ちです」と電話を通じた会見で語ったのは三島賞の三国さん。自身が「小説の先生」と仰ぎ見た三島由紀夫の名を冠した賞をデビュー作で射止め、喜びがあふれた。

 「いかれころ」は、昭和50年代終わり頃の大阪南東部が舞台。さまざまな差別意識や因習を残す名家の濃密な人間模様が、河内弁を駆使した4歳の少女の一人称でつづられる。

 選考では、ほぼ満票で受賞作に。子供時代の視点と大人になってからの認識を巧みに組み合わせる語り口も評価され、「病的なものを抱える田舎の家の暮らしを非常にうまく書いている」(選考委員の町田康さん)と絶賛された。

 大阪府出身。近畿大大学院で日本文学を学び、作家を志した。受賞作には故郷である大阪・河内地方での記憶が投影されている。「今は開発が進み、田畑の多くが宅地になっている。当時の風景を小説の中にせめて残しておきたかった」

 タイトルは登場人物のモデルでもある祖母がよく口にした言葉で、「踏んだり蹴ったり」といった意味があるという。「自分をせかすような感じで、すごく絶望的な状況なんだけれどポジティブに前に進ませてくれる。そういうような言葉だと今は思っています」

 主婦業の傍ら午前中に執筆。原稿を夫にみせると、的確で厳しい批評が返ってくるという。「異質な価値観を持つ他者が同時に混在している世界観を描けるような作家を目指していけたら」

 一方、山本賞の朝倉さんは受賞会見の席で開口一番、「とっても幸せです」。この一言に、万感の思いが込められていた。

 『平場の月』は50歳になった男女の純愛を描いた物語。主人公の男性は、中学時代に片思いをしていた同級生の女性との再会を機に関係を深めていくが、その後女性の大腸がんが発覚する。

 選考では、口語体を中心としたオリジナルの文体を作り上げた点などが評価され、ほぼ満場一致で受賞作に決まった。選考委員の石田衣良さんは「いわゆる『難病もの』だが、貧しくてもお互いを思いやる男女の切ない恋がよく描かれている」と称賛した。

 北海道出身。スーパーの事務職などを経て、40歳を過ぎて作家デビュー。平成21年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞したが、その後は文学賞から遠ざかっていた。「眠れない夜とか、ふと『賞があればいいなあ』と思ったこともあった。今は本当にうれしいです」

 身長145センチの自称「日本最小作家」だが、執筆への思いは強い。

 「年齢を考えると、これから多くは書けない。『社会的に弱い人』『味方の少ない人』を、否定も肯定もせずに書いていきたいと思います」(文化部 平沢裕子、海老沢類、本間英士)

 三島由紀夫賞と山本周五郎賞について、新潮文芸振興会は次回第33回からの選考委員を発表した。任期は4年。選考委員は次の通り(敬称略)。

 【三島賞】川上未映子、高橋源一郎、多和田葉子、中村文則、松家仁之

 【山本賞】伊坂幸太郎、江國香織、荻原浩(留任)、今野敏、三浦しをん

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