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【田村秀男のお金は知っている】激化する米中貿易戦争… 嵐を前に「消費増税」という愚策

 米中貿易戦争が激化している。トランプ米政権は対中輸入品2000億ドルへの制裁関税を25%に引き上げたばかりでなく、同税率を残る対中約3000億ドルすべてに広げる手はずを整えた。

 市場では「米中通商協議は合意に至り、最終的には制裁関税が段階的に引き下げられる」(ゴールドマン・サックス調査部)との見方が依然根強い。そんな楽観論は、消費税増税しても構わないという論拠になる。

 日本経済は20日に発表される1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率速報値がマイナスになる情勢だが、その主因は対米輸出減を受けた中国経済の減速による。ならば米中貿易戦争が終息に向かうのだから増税OKというシナリオが描き出されるのだが、拙論は街頭の易占いよりもお粗末な非科学的インチキ論法だと断じる。

 グラフを見てもらおう。日本の対中輸出と中国の新規融資の前年同期比増減率の推移である。中国経済の減速は実は、米中貿易戦争が始まった昨年7月以前から始まっている。中国景気の下降は中国金融の量的縮小、つまり金融引き締めの産物だ。

 経済という体の成長に必要な血液であるカネの量を増量せずに減らせば、成長できなくなる。経済を支配する共産党のエリートたちはわかっているが、カネを拡大したくても制約を受けている。それは外貨、すなわちドルの流入量に応じて人民元資金を発行するという中国特有の通貨発行制度に起因する。

 発券銀行である中国人民銀行は自身が決める交換レートによって外貨を市中銀行から買い上げ、人民元資金を市中に供給する。人民元を切り下げた2015年夏以降、中国からの資本逃避は止まらない。当局は企業などの海外からの外貨借り入れを容認して外貨を確保し、金融を拡大してきたが、多くは不動産や生産設備の過剰を生み、債務バブルを膨らませた。

 それはやばい、ということで当局は新規融資の縮小に踏み切ったが、主たる対象は党直結の国有企業ではなく、経済の裾野を形成する民営の中小企業であり、景況を一挙に落とし込んだ。習近平政権はあわてて金融緩和と減税に転じたが、米中貿易戦争の影響が実体景気に波及するようになって景気刺激効果は減殺される。金融も外貨難が続くので思い切った拡大策がとれない。財政も収支が悪化するので同様だ。

 中国の金融膨張こそがハイテク覇権、軍拡や中華経済圏構想「一帯一路」という対外進出策のエンジンだとみるトランプ政権は当然、対中強硬策を緩めない。習政権は経済モデルの存亡にかかわるので譲歩はできないので、ともかく時間稼ぎに徹する。その帰結が中国経済失速の長期化であり、グラフが示すように日本の対中輸出減をもたらす。そんなときに、消費税増税とは、まるで嵐が来るというのに雨戸を開けておくような愚策なのである。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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