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見直される美術館の「常設展」 訪日外国人は“定番”を愛好

横浜美術館が誇るシュールレアリスムの名品に現代美術家、今津景さんの絵画を組み合わせた展示=横浜市西区
横浜美術館が誇るシュールレアリスムの名品に現代美術家、今津景さんの絵画を組み合わせた展示=横浜市西区

 東京、大阪で来場者122万人を動員した「フェルメール展」など海外の名品を集めた企画展が人気を誇る一方で、各地の主要美術館が自らの所蔵作品のみで構成する「コレクション展」に力を入れている。背景には海外からの来館者の増加や、自らの“財産”を見つめ直し有効活用しようという戦略があるようだ。

アイデンティティー

 「今年のテーマは『コレクション』です」。開館30周年記念展「Meet the Collection」の開幕に際し、横浜美術館(横浜・みなとみらい)の逢坂恵理子館長は高らかに宣言した。節目の記念展は国内外から名品を借りるのではなく、1万2000点を超える収蔵作品の中から絵画、彫刻、写真など約300点を厳選し展示した。「ただ並べただけでは芸がない」と、束芋(たばいも)さん(43)ら気鋭のアーティスト4人に依頼し、同館の所蔵品と自作と組み合わせた特別な空間を創ってもらうなど工夫も凝らした。

 「コレクションは美術館のアイデンティティーの中心を成すもので、美術館の本当の魅力はコレクションにある。でも日本ではずっと企画展に重点が置かれてきた」と逢坂館長は語る。

5年で倍増

 国際紙アートニュースペーパーによると、昨年世界で最も1日当たりの集客数が多かった展覧会トップ20に「東山魁夷展」(6位、国立新美術館)や「縄文」展(9位、東京国立博物館)など日本から3つもランクインした。いずれもマスコミ各社と組んだ企画展だ。

 一方で、縄文展を開いた東京国立博物館(東京・上野公園)は、国宝89件を含む11万7000件以上の文化財を所蔵する国内随一の館として、企画展とは別に、年間通じて所蔵品を公開する「総合文化展」も行っている。他館のように常設展としないのは、毎週のように展示替えをするからだ。常時3000件ほど、年間で公開件数は計約7200件(平成30年度)に上る。

 同館によると、30年度の総来館者数は約214万人。うち総合文化展を鑑賞したのは約99万人と半数に満たないが、25年度と比べ2倍に伸びた。背景には訪日観光客の増加があり、今では海外からの来場者が全体の3、4割を占める。仏ルーブル美術館で観光客の大半が常設展示の名画「モナ・リザ」を見るように、東博を訪れた海外からの観光客はほとんど、日本美術の粋を概観できる総合文化展を鑑賞するという。

 同館は東京五輪・パラリンピックも見据えて今年3月、総合文化展の展示室に4言語(日英中韓)による解説パネルを増設。「作品が生まれた時代や文化の背景などが、外国人のお客さまや学生により伝わるよう刷新した」と竹之内勝典・同館総務課長は説明する。音声ガイドや展示解説アプリも今後、よりわかりやすいシステムに改めるという。

出会いのきっかけに

 「2020年」を見越した美術館の改修工事も全国的に相次いでおり、東京都現代美術館や福岡市美術館など、リニューアルを機に自らの“根幹”を見つめ、大規模なコレクション展を開く館が目立っている。

 指定管理者制度の導入以降、公の美術館では経済効率を求めて大量集客可能な企画展が優先される一方、市民の公共財産としてのコレクションの活用が求められてきた。横浜美術館の逢坂館長は「運営資金が限られるからこそ、蓄積したコレクションの魅力をうまく伝えることで、より多くの人が美術館に目を向けるきっかけにしたい」と話す。

 私立の美術館にもコレクションに新たな光を当てることで、従来と違う客層に訴えようとする動きが出ている。サントリー美術館(東京・六本木)では同館が誇る日本美術を国際的に活躍するデザイナー、佐藤オオキさんの視点で読み解く展覧会を開催中だ。「日本美術になじみのない海外の方とか若い世代に、新たな気づきを提供できたら」と佐藤さんは話している。(文化部 黒沢綾子)

開催中及び近日開催の主なコレクション展

東京都現代美術館/リニューアル記念「百年の編み手たち」/6月16日まで

横浜美術館/開館30周年記念「Meet the Collection」/6月23日まで

豊田市美術館/リニューアル記念「世界を開くのは誰だ?」/6月1~30日

広島市現代美術館/開館30周年記念「美術館の七燈(しちとう)」/5月26日まで

福岡市美術館/リニューアル記念「これがわたしたちのコレクション+インカ・ショニバレCBE」/5月26日まで

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