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【三井美奈の国際情報ファイル】ノートルダム大聖堂が燃えた夜

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 黒煙を上げて炎上するノートルダム大聖堂。あの夜、セーヌ川岸を埋め尽くしたパリ市民は生涯忘れないだろう。キリスト教徒か否かを問わず、心の故郷というべきものが燃えていく喪失感。風が運んだ灰をしゃがんで拾う人もいた。水面に赤い炎が揺れていた。

 衝撃の映像は世界に広がり、中でも米国の反響は大きかった。米報道は「なぜ火災は起きたか」「文化財保護策は十分か」など事故原因に迫り、時に仏メディアより鋭かった。米国では欧州以上に、キリスト教が政治や社会に強い影響力を持つことの表われだろう。

 トランプ米大統領は火事のさなかに「空中放水で消し止めるといい。早く行動を!」とツイッターで発信し、パリの消防隊に「そんなことをすると聖堂全体が崩壊する」とたしなめられた。鎮火後はローマ法王フランシスコに電話で「再建にはわが国の偉大な専門家を派遣します」と支援の意向を伝えた。

 支持層のキリスト教保守派を意識したのだろうが、こちらもちょっとお門違い。フランスでは1905年以来、政教分離が徹底されている。大聖堂は公共文化財で、法律上は教会に無償で貸しているに過ぎない。改修は仏政府が全面責任を負う。

 一方、法王の反応には、フランスと教会の歴史的な緊張関係がにじみ出た。

 法王の悲しみは、パリ大司教宛てのメッセージで示された。「多様な信仰を持つパリの市民、そしてフランスの国民的シンボルが傷ついた」と嘆いたが、キリスト教への言及は「パリのカトリック教徒の信仰と祈りの場所だった」とあるだけ。約850年の歴史を持つ巡礼地の惨事にしては、ずいぶんあっさりしている。十字架のキリストが身に付けたとされる「いばらの冠」など貴重な聖遺物には全く触れなかった。

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