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かこさとしさん初の詩集 亡くなる直前に依頼「うれしそうで」

左がかこさとしさんの孫の亀津鴻さん、右が娘の鈴木万里さん。今回刊行した詩集の基になった冊子とともに
左がかこさとしさんの孫の亀津鴻さん、右が娘の鈴木万里さん。今回刊行した詩集の基になった冊子とともに
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 昨年5月、惜しまれながらこの世を去った絵本作家、かこさとしさん(享年92)。先月、かこさんの初めての詩集「ありちゃん あいうえお」(講談社)が出版された。生前に書きためていたものの中から選ばれた詩は、かこさんのみずみずしい感性や、一人のおじいちゃんとして孫へ注いだ愛情にあふれており、子や孫を持つ誰もが共感せずにはいられない一冊となっている。(文化部 加藤聖子)

亡くなる10日前

 誰もが1度はかこさんの著作を読んだことがあるだろう。「だるまちゃん」シリーズや「からすのパンやさん」「どろぼうがっこう」。こんな著名な絵本以外にも、科学者としての経験を生かして描かれた多くのかがく本や、「伝承遊び考」など、生涯で600冊以上もの著作を残した。

 そんなかこさんが、詩集出版の提案を受けたのが、ちょうど1年ほど前の昨年4月20日のこと。かこさんの長女、鈴木万里さん(62)は、「今思えば、依頼をいただいたのが亡くなる10日ほど前。ギリギリのタイミングだった」と語る。かこさんは生前、詩や俳句、短歌などを多く書きためていたというが、詩集の刊行は今回が初。本作は書棚に残されていた冊子の中から2冊を基に作られた。「ソファにいた父にこの話をしに行ったら、書棚に置かれていた冊子を指さして『よければお使いください』と。照れながらも非常にうれしそうな顔をしていた」と鈴木さん。

 本作の編集を担当した編集者の五十嵐千恵子さんは「かこさんの好奇心、なんでも面白がるユーモラスな精神、豊かな感受性など、他の作品にも見られる“かこイズム”を詩の中にも発見でき、編集作業は幸福そのものだった。先生が向こう側でうれしそうにいたずらっぽく笑っている姿まで想像できた」と振り返る。

温かなまなざし

 本作には「ありちゃん あいうえお」という言葉遊びうたと、孫の成長を見つめ、つづられた詩「まごまごのうた」12編が収録されている。タイトルの“ありちゃん”は、アリ(蟻)がかこさんも子供も大好きで、なおかつ“かこ作品”には欠かせない生き物、という理由だという。

 第一部の「ありちゃん あいうえお」は、子供たちが言葉を学びやすいよう、従来の50音に加え、濁音と半濁音を合わせた71音を織り込んでつくられた詩。シンプルながらリズミカルで優しい文体が美しく、子供と一緒に口ずさみたい作品だ。鈴木さんは「父は24時間365日、言葉探しや言葉遊びを考えている人だった。かこさとしの言葉の感性を存分に感じることができる作品」と語る。

 第二部の「まごまごのうた」は、かこさんの実の孫であるたっくんとひろちゃんが幼い頃に書かれた詩。40編書かれていたうちの12編が収められた。一人の“じいじ”として、孫の成長を見守り、その一挙手一投足をいとおしむ様子が伝わってくる。

 鈴木さんは「まごまご」に込められた意味を、「父は自分の子供は2人とも女の子だったので、男の子を育てたことがなかった。“2人の孫”を“まごまご”しながらあやしたり、遊び相手になったりしていたことから」と解き明かす。子供のしぐさが目の前に浮かんできそうなほど生き生きと、ユーモラスにつづられた詩は、まさに“じじばか”の結晶だ。

 当の孫本人である“ひろちゃん”こと、亀津鴻(ひろき)さん(25)は初の詩集について「詩の形になったのを見てうれしくもあり、恥ずかしくもある」と、祖父の愛情の大きさを改めて感じたようだ。鈴木さんは「たっくん、ひろちゃんを自分のお子さん、お孫さんに読み替えていただければ」と話している。

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