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【山本一力の人生相談】うんちく好きの同僚に疲れる

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

 50代女性。同僚の男性がいわゆる「健康オタク」で、すきあらば私に持論を語り、アドバイスをしようとします。先日は私が世間話のつもりで何げなく「最近、歯ぎしりするんだけれど」と言ったら、それが同僚の持論スイッチを押したようで、「砂糖を一切やめたほうがいい。なぜなら…」と始まってしまいました。おそらく彼は親切のつもりなのでしょうが、余計なお世話とはこのことです。一緒に過ごす時間が長いので適当に聞き流すように努めていますが、彼の口調は常に偉そうで、聞いているだけで疲れます。しかもその持論はどれも信(しん)憑(ぴょう)性があやしいものばかり。ストレスなく付き合うには、どうすればいいでしょうか。

 (東京都、会社員)

回答

 職場で、四六時中顔を合わせる同僚。

 相手との間合いの開き方・詰め方をうっかり誤ったときのストレス…想像しただけでも気が滅(め)入(い)る。

 わたしはすでに古希から一年が過ぎた。

 出版社・新聞社・放送局など、仕事先の担当者もその上司も、ほぼ全員がわたしよりも年下というのが現状だ。

 相手との会話には、相当に神経を使う。

 軽い気持ちで口にしたことが、年下の者には指示に聞こえることがあるからだ。

 そんなつもりで言ったわけではないのにと、弁明しても遅い。すでに事態が動いているからだ。

 相談者のケースは、わたしとはまるで反対の状況だと拝察する。あなたが発した言葉を相手は自己解釈し、とくとくと自説開陳におよばれる日々に直面しておいでだ。

 会話とは自覚と自覚の融合で成り立つものだと、わたしは考えている。

 どちらかが自覚なしに主張を始めたら、それはもはや会話ではなく、講釈と化す。

 力関係で下方の者は、相手のひとりよがりの講釈の聞き役だ。ときに相(あい)槌(づち)を打ち、いかにも聞いていますをアピールする。

 相手の饒(じょう)舌(ぜつ)をやりすごす妙案を、うちのカミさんがポロリとのたもうた。

 すべてに「は行」の相槌で答える。

 はああと語尾を下げ、ひえっと驚く。

 ふううっと吐息を漏らす。へええ、ほううと感心する。

 大事なことは気持ちを込めないこと。

 気を入れての相槌は、打つほうがくたびれる。「は行」を機械のごとく繰り返して、相手の無益な講釈から身をかわせばいい。

 多少なりとも自覚ある者なら、やがて気づいて口を閉じるやもしれぬ。と、書きながら、思い当たった。カミさん当人が、おれに「は行」を使っているぞ、と。

回答者

山本一力 作家。71歳。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。近著に「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「長兵衛天眼帳」(角川書店)、「落語小説集 芝浜」(小学館文庫)。

相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞文化部「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

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