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【最新電脳流行本事情】奇書「ドグラ・マグラ」に振り回された1カ月…

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 3月からツイートを収集する際の検索フレーズを増やしてみた。取得できたツイートは約10万件で、前月より2万8千件ほど増えた一方、上位10作のうち半分が漫画。いずれも2~3月に新刊が出た作品かつ、人気シリーズということもあるのだろう。

 中でも、押切蓮介さんの『ハイスコアガール』のツイートは伸びがすごかった。最終巻ということもあってか、発売日(3月25日)から月末まで、1週間もなかったのに2位にまで登り詰めた。

 『ハイスコアガール』は懐かしいアーケードゲームの話が満載のラブコメディー。キャラクターの著作権をめぐる問題で一時休載したことがあり、当時その問題の取材を担当した同僚記者が既刊本を購入。みんなで回し読みした。読んだ記者一同「おもろい」と口をそろえ、問題をクリアし、再開を願ったのを思い出す。

 小説では、2月下旬に発売された今村昌弘さんの本格ミステリー『魔眼(まがん)の匣(はこ)の殺人』が3月に入ってもツイートの勢いが衰えず、3位に。そして目を疑ったのは作家、夢野久作(ゆめの・きゅうさく)の小説『ドグラ・マグラ』が4位に入ったこと。世紀の奇書との呼び声もある、昭和10年刊行の本が今ごろなぜ?

 スマートフォン上で文学作品を読むなどするゲームの攻略条件になっているようで、ゲーム利用者の投稿が検索に反応した。本との出合いは多様化していると感じつつ、文字通り好奇心で読んだ人も少なくない。

 その昔、先がまったく見通せないストーリーに途中で読むのを投げたことがある。約20年ぶりに再挑戦したが、前回つまずいた「チャカポコ」という記述が連発する章は苦行で、「空前絶後の遺言書」の章は悶絶(もんぜつ)の域。終盤はどんでん返しのような、ちゃぶ台返しのような…。不思議と読後はモヤモヤしない一方、「あなたはどう解釈する?」という結末に考え込む。読んだことがあるという上司のH編集長に解釈を聞いてみたが、「分からん。そういう本だ」とあしらわれた。

 さて、4月9日に書店員が「売りたい本」を投票で選ぶ「本屋大賞」が発表される。候補になった10作の3月中の出現数を見てみると、トップは伊坂幸太郎さんの『フーガはユーガ』で、2位に森見登美彦さんの『熱帯』。

 両作とも作者自身に対する人気の高さがうかがえるが、『熱帯』についていえば森見さん自身が「小説を書く理由」を見失い、休筆期間を経ての刊行。ファンにとっては、待ちに待ったということか。

 内容はともに面白い。『フーガはユーガ』は不思議な能力を持つ双子の物語で、私は行きつけの居酒屋のカウンターで読みふけり「うまい!」と声を上げ、マスターを驚かせてしまった。料理の味ではなく、物語の構成がうまい。爽快感もある。が、読みやすさが「読み応え」という点で裏目に出てしまうかも、と思う。

 『熱帯』は、意味深長な言葉で始まる謎の物語「熱帯」をめぐる小説で、読んでいると夢の中にいるような感じ。電車内で「すごい!」と脳内で叫んでしまった、そんな結末を迎える。この2作のどちらかならば『熱帯』を推したいが、回りに回る独特の世界観は好みが分かれそう。

 本屋大賞作はどの作品だろう。分からない…それならばと思い、本屋大賞の傾向を探ってみる。「あの出版社が有利」みたいなのが、あったりして。

 過去、大賞と候補になった152作の得票ポイントに加え、作家や出版社、ページ数、本体価格といった情報をAIプログラムに読み込ませ、獲得ポイントと相関関係のある要素がないかを探った。

 AIの計算によれば、男性や共著より、女性作家の方かやや優位。つたないプログラムではほかに特徴的な傾向は見いだせず、それだけ公正に選ばれている証左といえる。

 そんなAIで、恐れ多くもいちおう大賞を予想してみた。傾向らしき傾向がほとんどないので、予想させるたびに結果が変わる。寝ている間に約1万回の予想を繰り返させると、大賞候補を『熱帯』▽深緑野分(ふかみどり・のわき)さんの『ベルリンは晴れているか』▽三浦しをんさんの『愛なき世界』▽芦沢央(よう)さんの『火のないところに煙は』-の4作に絞った。

 『火のないところに煙は』の出現に、ビビる。作家の「私」が見聞きした怪談の短編集で、最終話ですべての物語が“見えない力”に吸い寄せられたように線でつながる。面白いのだが、ときに目を背けたくなるほど怖い。AIすらも引き寄せるその力に、背筋が冷たくなった。

 ちなみに、予想は作品の内容をまったく加味していないし、“予想外”の結果も期待してしまう。なにより、候補作はいずれも内容的にハズレはない、と断言したいが、記事の締め切りまでに全作読み切れず。

 それほど『ドグラ・マグラ』の読破には時間を取られ、振り回された。アイヌ文化の描写に評価が高いという『ゴールデンカムイ』も読んでみたかったのになあ…。(渡部圭介)

     ◇

 ツイッターのつぶやきを解析すれば、話題の作家や本が分かるのではないか。思わぬ本との出合いも、あるかもしれない。そう感じた記者が自ら解析プログラムを構築、分析する連載コラムです。

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