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【高論卓説】外国人労働者、特定技能に柔軟性を 職種またぐ就労不可、障害に 永井隆氏 

法務省が主催した4月から始まる外国人労働者受け入れの制度説明会=3月22日、埼玉県庁
法務省が主催した4月から始まる外国人労働者受け入れの制度説明会=3月22日、埼玉県庁

 「特定技能という新しい在留資格の新設で、外国人労働者の受け入れが拡大されるのは賛成。ただし、もっと柔軟に外国人が工場内で働けるようにしてほしい」。こう話すのは、上場する自動車部品メーカーの人事・労務担当役員だ。この会社では400人を超える外国人が働いていて、大半は中国やベトナムなどからの技能実習生である。

 技能実習2号(入国後2、3年目の技能に習熟するための活動)を修了すれば、特定技能1号に移行できる。

 技能実習の目的は、国際貢献というのが建前。日本の高い技能を実習生が習得し、母国に持ち帰るための在留資格という位置付けだ。就労を目的としていないため、実習先からの転職はできない。2017年の失踪者は7089人。12年が2005人だったので、大きく増加した。長時間労働や低賃金などの実態が、しばしば表面化してきた。今年に入り、三菱自動車やパナソニックなどが摘発を受け、法務省と厚生労働省から技能実習計画の認定を取り消されている。

 これに対し、4月から始まる特定技能は単純労働を含めた就労を目的とする在留資格だ。とはいえ、「技能実習に続き特定技能でも、職種をまたいでの外国人の就労が認められずに、本人にとっても受け入れる企業にとってもマイナスは多い」と同役員は指摘する。技能実習の3年間で同じ職種ばかりに従事していると、「その職種でのカンとコツはつかめる半面、工場で求められるトータルでの技能を実習生は養えない」(同)。

 特定技能での「電子機器組み立て」の場合なら、金型のメンテナンスや機械の修理といった付帯する仕事、さらに射出成形や塗装などの周辺の職種に通じてこそ、一人前のワーカーに成長できる。なのに、外国人労働者には申請した職種の就労しか許されないのだ。就労者の成長が止まってしまうことは、企業にとってもマイナスは大きい。

 三菱自などとともに技能実習および特定技能で、新たな受け入れが5年間できなくなったパナソニックだが、「国内のモノづくりは減っているので、大きな影響はない」と執行役員の一人は打ち明ける。

 グローバルに多様な事業展開のできる会社はともかく、規模の小さい自動車部品では「人手不足の中、外国人労働者なくして、国内生産は成り立たない。生産活動が停滞した国は衰退する。特定技能の活用はモノづくり再興の最後のチャンスだが、一方で業界再編を視野に入れている」と前出の役員。

 別の自動車部品の首脳は「タイ工場でも人をとれないなど世界規模で人手不足は深刻。特定技能新設でも、日本は果たして外国人から選ばれるのか」と、不安を口にする。

 技能実習は本当は労働者なのに、実習生として本質をねじ曲げたため、多くの問題を発露させた。今回の特定技能についても、「日本政府はまず、移民政策であると明言すべきだ。ドイツのように」(欧州の移民文化を専門とする浜崎桂子・立教大学教授)という指摘はある。わが国の人口は激減していく。働く外国人と適正にやっている企業とが、“ウィンウィン”となれる弾力性のある仕組みづくりは早急に求められる。

       

 ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は『EVウォーズ』『アサヒビール 30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など多数。 

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