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ソプラニスタ、岡本知高 歌声の秘密

ソプラニスタ、岡本知高。衣装も含めて独自の世界観を表現する(石井健撮影)
ソプラニスタ、岡本知高。衣装も含めて独自の世界観を表現する(石井健撮影)
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 声楽家の岡本知高(ともたか)(42)が、本業の歌からテレビのバラエティー番組まで活動の幅を広げている。男性だが、女性のソプラノ歌手と同じ高さで歌える。「ソプラニスタ」と呼ばれ、世界で数人しかいないとされる。いわば異能の人。その歌の根底にあるものは何か。(文化部 石井健)

変わらなかった声

 かっぷくの良い体を包む、独特の派手な衣装はトレードマーク。取材の現場にも、その姿で現れた。立ち襟の間からのぞかせる顔には笑顔を絶やさない。

 ソプラニスタ。イタリア語で「男性ソプラノ歌手」という意味だ。ソプラノは女性の最も高い声域を指す。男性なのにそんなに高い声で歌える声楽家なのだということだ。しかも、その高い声を出すのに裏声を駆使するソプラニスタもいるが、岡本の場合、地声で歌えるのだ。

 声が高いのは、変声期に声が変わらなかったから、と本人は説明するが、「調べてもらったわけではないので、理由はわからない」。しかも、無自覚だった。大学の声楽科に入って、同級生の1オクターブ上を歌っていることに気づいて自覚した。それまでは、「誰からも指摘されませんでした。変声期は、声が変わった人の方が目立った。ずっと変わらない僕は、むしろ気づかれなかったのでしょう」。

 だから、例えば声が変だといじめられることもなかった。また、男性らしく低い声で歌うよう求める教師や指導者もいなかった。自分の声や歌を嫌いになることのない環境は、ソプラニスタにとっては幸いだった。

病気

 岡本は小学1年生から5年生までの間、股関節の病気であるペルテス病の治療のため高知県宿毛(すくも)市の親元を離れて高知市にある養護学校併設の医療施設で暮らした。

 施設には、同じ病気の子供たちのほか、重い障害を持ち、ヘッドギアをつけ、車椅子に乗っている子もいた。たまに奇声をあげる級友も少なくなかった。定期的に近所をみんなで散歩したが、奇異の目で見られた。「差別ってこういうことなんだ。小学生でしたが、いろいろなものを目撃しました」

 どの子供にも共通したのは、「がまん」だった。誰も「寂しい」と口にしなかった。

 「それが、寂しさを抱いている子供同士の社会というものなのでしょうね。寂しいのはみんな同じだからと、ものすごくがまんした。おかげで、いまだにがまん強い。“受け入れる”かどうかは別にして、なんでも受けとめることはできる。タフな精神が育まれました」

 歌の原風景も、この頃にある。

 「土曜日に帰宅し、日曜日にまた施設に戻る。片道3時間。両親が迎えにきた車の中で、窓外の景色を眺めて、柿がだんだん色づいてきたね、なんて話しながら、母と歌いました」

 帰宅すると、7歳上の姉が弾くピアノに合わせて歌った。施設でも毎日午後6時になると、みんなで集まって歌った。「大きな声を出すことで、言葉にできない思いを発散していたんじゃないかな」。歌は大切な存在だった。

 11歳で完治し、自宅に戻った。ペルテス病の子供たちは同じように施設を去る。だが、「大半の仲間たちは治らない。子供ながらにそのことを知っていたから、彼らを置いて自分だけが去っていくのが辛かった」。語りながら、涙に声を詰まらせた。

よみがえる景色

 5年生で地元の小学校に戻った。クラスには近所の幼なじみもいて、すんなりと迎え入れられた。ピアノを習い始めると、みるみる上達した。中学、高校では吹奏楽部でアルトサックスに夢中になった。

 吹奏楽に携わり続けたくて、音楽教師になろうと決めた。受験科目に声楽があったので、歌の練習を始めた。高校3年生も終わりの頃だった。レッスンを受けに訪ねた指導者は、その声を聴くやいなや、東京の国立音楽大学の知人に電話をかけた。ソプラニスタを発見したというわけだ。

 同大学の声楽科を受験して見事合格。準首席で卒業すると、仏プーランク音楽院に留学。ここは首席で卒業した。声楽家としては、国立音大在学中にデビューしていた。

 「歌っていると、忘れていた記憶がよみがえることがある。さまざまな景色、いろいろな人の笑顔。そういう場面を歌える」。それが、歌う喜びだと語る。

 3月には、新作アルバム「BoleroIV~New Breath 春なのに」を発売。また、「おか素~ソプラニスタの作り方」(BSフジ)というバラエティー番組が放送された。「声楽家は普通、声楽家の団体に所属するのですが、私は芸能プロダクションに。そんなものですから、バラエティー番組も大好きなんですよ」と笑う。4、5月に、この番組を記念した公演「岡本知高スペシャルコンサート~春につむぐ愛の歌~」を東京、そして地元の高知など4カ所で開く。

 「施設の職員の方たちも聴きにきてくれるのが、とてもうれしい」と声を弾ませる。

 岡本知高(おかもと・ともたか) 昭和51年、高知県出身。声楽家。国立音楽大声楽科在学中の平成10年、ベートーベンの「第九」日本初演80周年記念再現リサイタルでソプラノ独唱者として声楽家デビュー。同大卒業後、平成11年に仏プーランク音楽院に留学。14年、同校を首席で修了。15年、アルバム「ソプラニスタ」でCDデビュー。レパートリーはクラシックからポップスまで幅広く、18年からフジテレビのフィギュアスケート中継のテーマ曲「ボレロ」を歌って広く知られる。

 岡本知高スペシャルコンサート~春につむぐ愛の歌~公演は次の通り(いずれも税込み)。

 4月7日午後2時開演 軽井沢大賀ホール(長野県軽井沢町)全席指定5500円

 4月20日午後3時開演 名古屋市中川文化小劇場(名古屋市中川区)同5500円

 5月25日午後3時開演 高知市文化プラザかるぽーと大ホール(高知市九反田)同6000円

 5月31日午後7時開演 紀尾井ホール(東京都千代田区)同6000円

 問い合わせは、event@bsfuji.co.jp

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