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囲碁NHK杯で井山五冠破った早大生八段 初の大学生タイトルに意欲

第66回NHK杯テレビ囲碁トーナメント決勝の対局を、趙治勲名誉名人(中央)とともに振り返る優勝した一力遼八段(右)と準Vの井山裕太五冠(伊藤洋一撮影)
第66回NHK杯テレビ囲碁トーナメント決勝の対局を、趙治勲名誉名人(中央)とともに振り返る優勝した一力遼八段(右)と準Vの井山裕太五冠(伊藤洋一撮影)
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 第66回NHK杯テレビ囲碁トーナメントの決勝が行われ、一力遼(いちりき・りょう)八段(21)が井山裕太五冠(29)を破り、初優勝した。20歳11カ月で第62回(平成27年)大会を制した伊田篤史(あつし)八段(25)に続く歴代2番目の若さ(21歳8カ月)での優勝には、もう一つ画期的なことがあった。大学に通う棋士がNHK杯を制したのは初めてだったのだ。(文化部 伊藤洋一)

3度目の正直

 「ずっと難しい戦いだったので、勝つことができてうれしい。これまで2度、悔しい思いをしていたので(優勝を)目標にしていた。自分らしい手を打つことができました」

 第62、64回でも決勝に進みながら敗退していた一力八段にとって“3度目の正直”。優勝トロフィーを手に笑顔を浮かべた。

 NHK杯はタイトル保持者や、前年(平成29年)の賞金・対局料ランキング上位の計50人が出場し、トーナメント形式で戦う。毎年4月から1回戦の対局が放映され、翌年3月に決勝(今年は24日)を迎える。日曜日お昼の放送を楽しみにする愛好家は多く、七大タイトルに劣らず注目度は高い。

早碁は得意

 一力八段はこれまでにも、若手棋士に出場が限定された大会などで優勝したことがあり、タイトル獲得は通算7期。28年には当時、主要七大タイトルを独占していた井山五冠とテレビ棋戦の「竜星戦(りゅうせいせん)」決勝で戦い、勝利している。

 ただ、七大タイトル戦に限るとさっぱりだった。28年の天元戦、29年の天元戦と王座戦、30年の棋聖戦、王座戦とすべて井山五冠に敗れている。とくに惜しかったのが昨年の王座戦。初戦で勝利し最終第5局まで井山五冠を追い詰めたが、あと一歩届かなかった。

 それらは、対局者それぞれが考慮時間を8時間持って2日間かけて対局(棋聖戦)したり、持ち時間が3時間だったりするもの。

 それに対してNHK杯は、1時間半の放映時間に収める必要もあり、開始時から1手30秒(別に1分の考慮時間が10回ある)で打たなければならない。瞬時の判断、思い切った決断が求められる。「(持ち時間が短い)早碁(はやご)は得意」というだけあって、それまでの対戦成績6勝18敗と苦手にしていた井山五冠を攻略した。

囲碁のため5年生で上京

 一力八段が囲碁を始めたのは5歳のとき。仙台市に本社を置く新聞社「河北新報」社長である父の雅彦さんに教えられ、同社社主だった祖父の一夫さんもすぐ負かすほどのめりこんだ。小学2年生のときに、プロ養成機関である日本棋院の院生になった。当初は週末ごとに上京し、院生同士の対局に臨んでいたが、5年生のときに母親とともに東京都内に転居。囲碁修業にいっそう力を入れた。22年夏季の採用試験で合格、中学1年の13歳でプロ入りした。

 高校に通わず、10代半ばでプロ棋士になるケースが大半の囲碁界。ベテラン棋士らは「囲碁で強くなることを考えたら、学校に行く時間はもったいない。専念すべき」との考えだったが、本人は「同世代を含むいろいろな人に会って、見識を深めたい」と28年には早稲田大社会科学部へ進学。国際棋戦で海外に渡航することもあるハードな日程のなか、二足のわらじで勝利を積み重ねてきた。

大学生タイトルホルダーへの挑戦

 次に目指すのが、大学生初の七大タイトル奪取だ。将棋界では22年に早大教育学部に在籍していた広瀬章人(ひろせ・あきひと)八段(32)が王位を、26年には大阪大学大学院在籍の糸谷哲郎(いとだに・てつろう)八段(30)が竜王を奪取した例がある。

 日本棋院によると、京都大医学部を卒業した坂井秀至(さかい・ひでゆき)八段(45)が22年に碁聖を獲得したケースはあるが、現役大学生でもある棋士がNHK杯や七大タイトルを獲得したことはないという。

 一力八段は現在、8人が総当たりする本因坊戦リーグで、最終局を残し1差で首位の羽根直樹九段(42)を追っている。許家元(きょ・かげん)碁聖(21)への挑戦をかけた碁聖戦でも8強に残っている。

 大学の単位は取得できており、順調なら4年で卒業できるという。つまり、「大学生タイトルホルダー」になれるチャンスは、4月から始まる新年度のみ。「調べたわけではないですが、そう(大学生タイトルホルダーはいない)なのかなあと思っていました。そうなれるよう、頑張ります」と、一力八段は快挙を目指す。

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