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【熊木徹夫の人生相談】補佐役の人生がむなしい

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

 結婚してから約40年、誰かの都合に自分を合わせて生きてきました。

 夫は自営業。結婚以来、夫、義父母への三度の食事、午前10時と午後3時のお茶の用意を欠かせない毎日でした。義父母は数年前に亡くなりましたが、これからも、夫に三度の食事と3時のお茶を用意する人生は続くのだと思います。

 自分のことより他人のこと。それが当たり前の人生。でも最近、知人に「人に合わせるだけではダメよ」と言われ、人を支える補佐役に徹してきた私の人生が、むなしく思えてしまいました。私は、このままでいいのでしょうか。(埼玉県、60代、主婦)

回答

 あなたは、これまでに粛々と何も考えず、ただお茶の用意をしつづけたのか。はたまた「このままの人生でいいのか」と常々自問自答を繰り返しながら、日々のルーチンワークに耐え続けてきたのか。恐らく、後者なのでしょう。

 知人が何気なく発した「人に合わせるだけではダメよ」という言葉が、まるで天啓であるかのようにあなたに響いた。「やはりそうだったのか」と深く感じ入ったあなたは、これまでの40年の結婚生活を想起して、どうにもならないむなしさや悔恨の気持ちでいっぱいになった、という感じでしょうか。

 では、訊(き)いてみましょう。人生というのは、そもそも自分で決定できるものなのか。

 結婚という重大事だけは選択できるかもしれません。しかし、その後の人生において起こる数多(あまた)の事柄は何一つ予測できない。

 そして、日々の生活のさまざまな局面で、いちいち自分の意思決定が行えるのか。おそらく、それは誰にとっても難しいことのはずです。

 40年間のお茶の用意を、あなたは主体性なく服従し続けた自分の人生の象徴と捉えている。

 「私はこのままでいいのでしょうか」という問いは反語なので、答えはあらかじめ決まっているのだろう。

 しかし、仮にその答えに従ったとして、あなたのこれからに何が生まれるというのでしょう。

 あなたのこれまでを、単なる忍従と捉えるべきではない。あなたが葛藤を孕(はら)みながらも、一つずつ歩を進めてきたおかげで、家族全員が破綻を免れてきたであろうことをもっと評価していい。そしてその過程には、しっかりとしたあなたの意志が刻まれている。

 どうか、胸を張って人生を顧みましょう。かつてあったいいことが、たくさん思い出されてくるはずです。

回答者

 熊木徹夫 精神科医。49歳。「あいち熊木クリニック」院長。著書に「自己愛危機サバイバル」「ギャンブル依存症サバイバル」「精神科医になる」など。

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 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞文化部「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

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