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【高論卓説】社員の「デジタル感度鈍い」はトップの責任 小塚裕史氏

大手損害保険会社が初めて実施したデジタル戦略コースの1日型インターンシップ=2月22日、東京都千代田区
大手損害保険会社が初めて実施したデジタル戦略コースの1日型インターンシップ=2月22日、東京都千代田区

 多くの企業では新しい事業年度に向けた準備が進められている。事業計画のなかには、デジタル戦略の実行が含まれているはずだ。今年度までの取り組みで、どのような新しい技術を使い、どのように事業を変革していくかを検討してきた。その実現が本格化する。

 いつの時代であっても、従前のやり方を続けているだけだと企業の成長には限界が生じる。今日において成長を後押しするのが、新しいデジタル技術だ。デジタルを駆使する顧客が、心地良いと思うサービスを提供していかなければ、事業だけでなく、企業の存続さえ危ういという強い危機感を経営者が持つようになってきた。

 製造業というカテゴリーにある企業であっても、良い製品を作るだけでは十分ではない。国内外の大手製造業は、「自分たちはもはや製造業ではない」というメッセージを発信している。大きな時代の変革期にあって、企業と事業を変革する必要性を感じているのだ。

 「変革」というと、急激な変化が必要だという錯覚を持つ。今後の進むべき方向に大きくかじを切り、アクセルを踏みたくなる。だが、変革を一気に進めるのは簡単ではない。変革に成功した企業は突然変化したのではなく、水面下でじわじわと進めてきたのだ。

 大きな組織になるほど、「変わろう」とする力よりも「現状を維持しよう」とする力の方が強く働く。変わろうとすることはストレスになる。今のままでいる方が心地良い。だが、変革すると決めたのなら、元に戻らないようなやり方を考えて、着実に進めなければならない。

 焦らないが急ぐ、しかも着実に。このためには、変革に関わる関係者に、その必要性や進め方を理解してもらっておくことだ。トップの役割は、会社が考えていることを現場の従業員に理解してもらい、全面的に協力してもらうことだ。

 このコミュニケーションには、「これで十分に違いない」と考える以上に時間をかけるべきだ。「会社として事業環境をどのように見ているのか」「デジタル技術を活用して何をしようとしているのか」「それぞれの部門に何を期待しているのか」を伝える。会社としての考えを整理して伝えるコミュニケーション専門の役員や部隊が必要だ。

 「弊社の中間管理職はデジタルに対する感度は鈍い」という話を聞くことがある。仮にそうだとすると、それはトップの責任だ。実際に事業や業務に従事する人に伝わっていないのであれば何も起きようがない。「話が通じない」と諦めているようでは、デジタル武装を進めることなど無理だ。

 社員に対して一方的に話すだけでは十分ではない。例えば、部署別に伝道師を立て、その人たちが理解する。伝道師が各部署と議論する。各現場から上げられた疑問点は集約して経営から回答を出す。

 こういった仕掛けを作っても、機能しないケースが散見される。「言葉では理解できたが、結局何をするのか分からない」という「仏作って魂入れず」の状態に陥る。きれいな言葉で飾るのではなく、現場が腹落ちする具体的な内容になっているかを検証した方がよい。

 変革には大きな労力を要する。経営は「早く進めたい」という気持ちにもなるだろう。だが、経営のイメージする「デジタル」と、現場の考える「デジタル」の距離があるようでは、新年度中に実現することは難しい。

 こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、2019年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタル・トランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。

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