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女優、東ちづるさんが「LGBT映画」で目指すもの

東ちづるさんは女優業の傍ら、社会活動にも精力的に取り組む(酒巻俊介撮影)
東ちづるさんは女優業の傍ら、社会活動にも精力的に取り組む(酒巻俊介撮影)
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 「お嫁さんにしたい有名人ナンバーワン」といわれた女優、東ちづるさん(58)には社会活動家としての顔がある。30年近く骨髄バンクを支援し、障害者アートも後押しする。自ら50人のLGBT(性的少数者)にインタビューしたドキュメンタリー映画は、各地で上映会が開かれている。「全ての人が生きやすい世界になればいい」。彼女を突き動かすのは、そんな率直な気持ちだ。(文化部 玉嵜栄次)

何がだめなの

 《所属事務所の一室に、東さんは黒いジャケット姿でさっそうと現れた。「なぜLGBTなのか」。映画について問いかけると、りんとした印象そのままにはきはきした声音で語った》

 「4年前に、LGBTの友人から『自分たちのことを正しく伝える作品がないから作って』と頼まれたんです。最初は『無理!』って断ったんだけど、よくよく考えると断る理由が見つからない。ドキュメンタリー番組なら経験もあるので、それなら自分にできるかもしれないと」

 《キャスティングやインタビューを自らこなし、LGBTの映画「私はワタシ ~over the rainbow(オーバー・ザ・レインボー)~」が誕生したのは一昨年のことだ。90分の作品で、LGBT当事者やその家族らが出演し、それぞれが抱えた思いを率直に語っている》

 「私がLGBTについて考えるようになったのは、十数年前、仕事でオランダを訪ねたとき、偶然参列した同性カップルの結婚式がきっかけです。私、身構えてたんです。でも、式が始まると子供からお年寄りまで、とても自然に添い遂げたい2人を祝福してた。それで考えるようになったんです。LGBTの何がだめなんだろう、って」

身近な人思い浮かべて

 --LGBTの認知は進んでいると考えます

 「理解がある人と、否定的な人との間に濃淡がすごくはっきりしてきたように感じています。ただ、否定するのが悪いわけではなく、『家族やカップルはこうでなければ』という思い込みがあるんだと思うんです。解消されることもあります。例えば米国では、同性婚反対派だった議員が、息子がゲイだというカミングアウトを受けて同性婚支持に変わった例があります」

 《電通が昨年10月、6万人を対象にした調査では、8・9%の人がLGBTに該当した。11人に1人の計算となる》

 「LGBTであることを言い出せずにいる人が身近にいて、知らない間にその人を傷つけているかもしれません。LGBTを考えるとき、家族や友人、同僚の顔を浮かべてほしい。誰も傷つかず、全ての人が生きやすい世界になればそれが一番いいじゃないですか」

 --印象に残った(映画のための)インタビューは

 「インタビューをした多くの人が『子供のとき、自分は大人になれないと思った』っていうんですね」

 《東さんはそう語るとしばらく考え、続けた》

 「生きていてはいけないと考えていた、と。自分の存在は家族に迷惑をかける。自分自身も変わった存在として扱われるのがつらい。どこまで生きたらいいんだろうと考えるようになった。そう話すんです。私は今、子供たちに伝えなければいけないと思います」

 《映画を40分に再編集し、小中高校など学校現場に無償配布している。これまでに200校以上から要請を受け、提供した。1000校への配布を目指す》

「まぜこぜ」の社会を

 《東さん自身も「痛み」を抱えた一人だ。平成14年に出版した本で、親の過干渉で成人後も生きづらさを抱える「アダルトチルドレン」であると公表した。母の期待に応えようと優等生を演じ、大学受験に失敗すると「期待を裏切った」と言われた。東さんには高校時代の記憶がないという》

 --自身の体験の影響は

 「大いに関係しているでしょうね。自分が生きづらいから、不安を感じるから(社会活動を)やっているんだと思います」

 《活動を始めたきっかけは、27年前に偶然見たテレビ番組だった。白血病と闘う高校生の少年が出演し、感動を呼ぶ内容だった》

 「番組からメッセージを感じられなかった。なぜ彼は出演に応じたんだろう。視聴者に同情して泣いてもらいたいわけじゃないはずです。それで彼に連絡を取りました。すると骨髄バンクができたばかりの頃で、登録者を増やしたかったのだというのです。知ったのなら動くしかない。それからは活動が活動を呼び、道が増えていきました」

 《東日本大震災翌年の24年に一般社団法人「Get in touch(ゲット・イン・タッチ)」を立ち上げた。英語で「つながろうぜ」という意味だ》

 「震災では『絆』という言葉がよく使われる一方で、避難所でパニックになった自閉症の子供の家族に『静かにさせろ』と怒鳴ったり、車いすの人が利用を断られたりするつらい現実もありました。日頃からつながっていると、そうはならないんじゃないかな」

 --具体的にどうすれば

 「誰も排除せずに多様な人たちを包みこむ…、私は『まぜこぜ』と呼んでいますが、そんな社会をつくりたい。そのためのGet in touchです。音楽やアートなどのイベントを通じてまぜこぜを具現化していきたい。人は楽しいところにしか集まりませんから。東京五輪・パラリンピックのある2020年に向けて機運が高まっています。まぜこぜに社会を変えるチャンスですよね」

 東ちづる(あずま・ちづる) 昭和35年、広島県生まれ。大阪での会社員生活をへて、芸能界入り。ドラマや映画、ラジオのほか、講演や執筆などでも活躍。24年、誰のことも排除しない「まぜこぜの社会」の実現を目指す一般社団法人「Get in touch」を設立、理事長に就任。29年、増田玄樹(げんき)監督とともに制作したLGBTのドキュメンタリー映画「私はワタシ ~over the rainbow~」は各地で上映会が開かれている。著書に「〈私〉はなぜカウンセリングをやめたのか 『いい人、やめた!』母と娘の挑戦」(マガジンハウス)など。

 LGBT 性的少数者(マイノリティー)の総称。レズビアン(Lesbian=女性同性愛者)、ゲイ(Gay=男性同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual=両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender=心と体の性が一致しない人)-の英語の頭文字をとっている。

 「私はワタシ ~over the rainbow~」上映会 これまでに青森、宮城、福島、東京、神奈川、新潟、栃木、大阪、兵庫、福島などで開催された。今後、富山や沖縄などでも予定されている。

 LGBT啓発用DVD「自分が自分らしく生きるために」(無料)の希望校はGet in touch(info@getintouch.or.jp)にメールで申し込む。

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