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【日本語メモ】「問題発言」に足りない「ら」

6日の参院予算委で、小西洋之氏(右端)の質問姿勢を批判した答弁を撤回し、謝罪する横畠裕介内閣法制局長官(左)
6日の参院予算委で、小西洋之氏(右端)の質問姿勢を批判した答弁を撤回し、謝罪する横畠裕介内閣法制局長官(左)

 3月6日の参院予算委員会で、内閣法制局長官が問題発言をして謝罪するできごとがありました。野党議員からの質問に対し、内閣に対する国会の行政監視の役割を説明する中で「(委員会で)声を荒らげて発言することまで含むとは考えていない」と答弁したのです。この発言に野党が反発し審議中断。結局、長官は直後に発言を撤回、謝罪し、さらに8日の同委員会でも謝罪しました。要するに国会議員が質問する際、大声で叱責するように行うことを“批判”したことが、野党側の怒りを買ったようです。

 この発言騒動について、編集局のある部長から「法制局長官のあの発言、いかがなものですかね?」と問い合わせがありました。「えっ? 校閲部で記事中のミスを見逃したかな」と身構えましたが、違いました。動画で長官発言を聞くと「荒(あら)らげる」を「荒(あら)げる」と言い間違えているというのです。

 確認すると、たしかに「あらげる」と発音していました。この「荒(あら)げる」の誤用は新聞制作の現場では頻出案件なので、校閲の修正では基本中の「き」です。「法制局長官といえば、法律の専門家でもあり、難しい文章もたくさん読んでいることでしょう。それなのに『荒(あら)げる』とは…」。ある部長は嘆きまじりに指摘したのです。

 (記事の中では、「荒(あら)らげる」と正しく表記されていました)

 確かに日本語の間違いを正すべき校閲部としては「その通り」というしかないのですが、文化庁の平成22年度「国語に関する世論調査」では、以下のような結果が出ています。

 「大きな声を出すこと」を「声を荒(あ)らげる」と答えた人は79.9%、「声を荒(あら)らげる」と答えた人は11.4%。正しく使える人が実は約1割しかいなかったのです。「あらげる」と答えた人は、10代、20代で70%台、それ以上の世代は80%台でほぼ割合は変わりませんでした。

かくいう筆者も新聞社に入社するまでは「荒(あら)げる」が正しいと思い込んでいました。「あららげる」は「ら」が1つ余分だろうと考えていたのです。

 広辞苑によると、[あららげる【荒らげる】~荒くする。「声を-・げる」]とあり、もう一方の「あらげる」も[【荒げる】~アララゲルの約]と掲載されています。しかし、本来は「あららげる」でしょう。文語形の「あららぐ」が元になっていると考えるとわかりやすいと思います。

 産経ハンドブックでも「誤って『あらげる』とも読まれるが、『荒げる』と書くのは不可」としています。「和(やわ)らげる」を「和(やわ)げる」としないのと似ている気がします。

 今回の長官の「言い間違い」は、日本人の「9割」に入っていると考えれば致し方ないかなとも思いますが、それだけの立場ならば、正しく「あららげる」と発音してほしかったですね。

 ところで、他人の言い間違い、書き間違いを指摘するのは、一般生活ではなかなかハードルが高いことです。校閲部は、その作業を頻繁に行うのが仕事。適度にオブラートに包みながら、指摘するのが円満なやり方です。決して「声を荒らげて」はいけません。  

(け)

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