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【石野伸子の読み直し浪花女】黒岩重吾どん底からの凝視(2)釜ヶ崎の体臭 株で失敗、キャバレー宣伝の修行から直木賞

 生活を安定させるためにミナミのキャバレーに勤め始めた。宣伝文句を考える要員、というのが面白い。その後も化粧品会社のコピーライターや水道関連の業界紙に勤務しながら、空いた時間を執筆にあてた。猛烈に書いた。司馬遼太郎や寺内大吉が主宰する「近代説話」を紹介され参加したことも励みになった。

 そして昭和35年、チャンスがやってきた。「週刊朝日」「宝石」共催の懸賞に応募して佳作入選した作品が評論家の中島河太郎の目にとまり、書き下ろしの注文がきたのだ。

 初めての長編小説。刊行されれば店頭に並ぶ。睡眠を削って執筆に没頭。そうして書き上げたのが「休日の断崖」だ。これが直木賞候補となり、選を逃れたものの注目を集める。早速中央公論から書き下ろしの依頼が舞い込み、1カ月半で書いたのが「背徳のメス」。これも前回に引き続き直木賞候補になり見事、受賞を勝ち取るのだ。以後、殺到した注文をこなせたのは、修行時代に書いたものが大いに役立ったという。

 松本清張の登場以来、人気の高い社会派ミステリーの書き手として有望な書き手となっていくが、人気作家となってからも折に触れ飛田界隈には足を運んだ。

 「暫く釜ヶ崎の体臭に触れないでいると、何となく欲求不満に陥る」(『どかんたれ人生』)のだ。

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