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【高論卓説】スバルの「大反省」 現場の声が経営に届かぬ風土 森一夫氏

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決算説明を行うスバルの岡田稔明CFO(右)ら=2月7日、東京都港区(臼井慎太郎撮影)
決算説明を行うスバルの岡田稔明CFO(右)ら=2月7日、東京都港区(臼井慎太郎撮影)

 個性的なクルマづくりで急成長したSUBARU(スバル)は一昨年の秋以来、完成検査の不適切な行為や不正が次々と発覚して揺れた。顧みて吉永泰之会長は「大反省です」と語る。最初に公表したのは、無資格の従業員による完成検査だった。ところが、新たな問題が五月雨式に明るみに出て、約1年もだらだらと引きずってしまった。

 信用を損なう最悪の流れである。その真因を探り、吉永会長は、経営トップと現場との意思疎通の難しさがとんでもない結果を招くことを知った。さらに掘り下げていくと、真面目ゆえに硬直した企業風土の問題に突き当たった。

 自動車メーカーは、法律に基づく型式指定通りに製造したかどうか、完成車について自社で決めたルールによって検査する。同社の社内ルールは30年前のままで、改定していなかった点に一つ問題があった。

 無資格者が有資格者のハンコを押していたので、他社ではハンコをどう管理しているのか。提携先のトヨタ自動車に聞いてみたら、既に電子承認でハンコは使っていないという。

 これは一例である。2011年6月に吉永氏が社長に就任して昨年6月に会長になるまでの7年間に、同社の販売台数は50万~60万台から100万台余りに急増している。にもかかわらず昔のままの検査ルールだったところに無理があった。

 聞き取り調査を進めると、検査部門の従業員がいろいろ問題を打ち明けるようになった。燃費検査データの書き換えもその一つだ。「最後に、ラインのスピードが速すぎるという話が出てきたんです」と吉永会長は言う。急増する台数をさばかなければならないため、旧態依然としたルールからの逸脱が必要悪として行われていたようだ。

 問題は、検査体制の改善を求める声が現場から経営陣に上がってこなかったことである。吉永会長は「みな上意下達の中で育ち、自由にものが言える風土ではなかった」点に原因があるとみる。「私が長くいた国内営業本部は、言いたいことを結構言えたので、他もそうだと思っていたのですが」と言う。

 会長になって、改めて現場で係長以下の従業員と話して分かった。スバルは「トップクラスの品質」を約束する「品質方針」を掲げてきた。ところが「品質最優先」を守っているかと尋ねると、実態は違っていた。製造部門は「生産最優先です」。開発部門は「開発最優先」ないし「日程最優先」。調達部門は「コスト最優先」である。

 吉永会長は社長時代に、個性を際立たせる差別化戦略で成功した。急成長すれば、どこかにひずみが生じる。同社の場合、完成検査の問題として表面化したわけだ。「隅々まで気配りできなかったこと。そして上にものが言いにくい風土の問題に思いが至らなかったこと」。吉永会長は率直に反省する。

 中村知美社長は1月に、電動パワーステアリング装置の不具合に対処するため、生産を10日間止めた。異例の措置である。「われわれとしては覚悟のうえです。何があろうと品質最優先なんです」(吉永会長)

 企業風土を自由闊達(かったつ)に変える取り組みは、先がまだ見えていない。企業は多くの場合、大きな問題を乗り越えるごとに成長する。スバルは今、その試練の中にある。

   

 もり・かずお ジャーナリスト 早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。 

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