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【激動ヨーロッパ】「信頼できるAI」へ EU、ルール作りで主導狙う

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地中海の島国マルタで人工知能(AI)を活用したロボットの開発にあたる研究者ら(2月8日、ロイター)。欧州では、AI技術で米中に後れを取っていることへの危機感も強い
地中海の島国マルタで人工知能(AI)を活用したロボットの開発にあたる研究者ら(2月8日、ロイター)。欧州では、AI技術で米中に後れを取っていることへの危機感も強い

 欧州連合(EU)が人工知能(AI)活用に関する「倫理指針」策定を急いでいる。「信頼できるAI」を掲げ、AIがもたらす潜在的なリスクを低減することで経済や社会に対する恩恵の最大化を図る。国際的な議論の喚起も目指しており、AI開発で米国と中国の後塵を拝すなか、世界的なルールづくりを主導しようとの考えもうかがえる。(ベルリン 宮下日出男)

■日欧連携の可否は?

 EUの欧州委員会は昨年12月中旬、倫理指針案を公表した。学界やビジネス界などの52人で構成する専門家会合がまとめ、意見公募を経て3月に最終案が示される予定だ。

 「AIは社会に大きな恩恵をもたらし得るが、人々がAIに基づくシステムを受け入れ、利用するには信頼が必要だ」。担当のアンシプ欧州委副委員長は発表時、倫理指針策定の目的をこう強調した。

 指針案ではAIの信頼性を確保する要件を「倫理」と「技術」という2つの側面から検討し、「倫理」に関しては「人間が中心」との視点に立ち、基本的権利や社会の価値・規則が尊重されることを挙げた。

 具体的に示された信頼性確保の要件は10項目。事故やトラブル時の責任の所在の明確化や人間によるコントロールの確保、AIの判断における差別や偏見の回避のほか、個人情報の厳重な扱いを定めたEUの「一般データ保護規則」(GDPR)の順守-などを求めた。ハッキングなど外部の攻撃への耐性も盛り込まれた。

 指針案は「AIへの倫理的なアプローチは責任ある競争に重要」とし、「欧州を越えた枠組みの検討や議論を促すことを目指す」とも明記。EUの指針策定を、世界的なルール作りへの弾みにしたいとの意欲を明確に示した。

 日本も昨年12月、政府の専門家会議がAI活用に伴う7つの基本原則案をまとめた。6月には大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれることから、政府はAIのルール作りの議論を主導したい考えといわれる。

 「人間中心」などEUの指針案と日本の基本原則案には重なる部分も目立つ。アンシプ氏は「志を同じくする国々が合意すれば、国際的な取り組みに貢献できるだろう」ともしており、日欧の連携の可否も注目されそうだ。

■米中に利益の7割

 EUがルール作りに尽力する背景には、AI開発をめぐる競争で、米国と中国に大きく引き離されていることへの危機感もある。AI開発には膨大なデータが不可欠で、国内に大手IT企業を擁する米中に有利だ。

 大手会計事務所プライスウオーターハウスクーパース(PwC)の分析によると、AIが2030年までにもたらす利益は世界で15兆7000億ドル(約1740兆円)に上る。だが、このうち約70%は米国を含む北米と中国に集中し、欧州は15%余りにとどまるとした。

 個人情報保護のため昨年施行したGDPRなどと同様、EUにはルールの国際標準化を図れば、域内産業の育成に寄与するとの狙いもあるとみられる。ただ、「倫理手段をテコにしても競争力強化にほとんど影響はない」(在ブリュッセルの専門家、エリーヌ・シボ氏)との見方から、AI投資の拡大を求める意見も強い。

 EUの資料によれば、16年時点のAI投資は、北米とアジアがそれぞれ150~230億ドルと80~120億ドルだったのに対し、欧州は30~40億ドルと見積もられ、大きく水をあけられた。

 欧州委も投資不足を真剣に受け止め、昨年まとめたAI戦略で投資拡大も倫理指針策定と並行で進める方針を表明した。「20年末までに200億ユーロ(約2兆5000億円)」の投資が必要だとし、EU予算からも15億ユーロを支出。各国の公共・民間投資を促す考えだ。

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