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【ニッポンの議論】教員の働き方改革

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千葉大の天笠茂特任教授(右)と全日教連の郡司隆文委員長
千葉大の天笠茂特任教授(右)と全日教連の郡司隆文委員長

 中教審は1月、教員の長時間労働の是正に向け、残業時間の上限を原則「月45時間」以内と定めた文部科学省指針の順守や一部業務の地域委託など総合的な取り組みをまとめ、文部科学相に答申した。ただ、長時間労働が常態化する中、教員からは「実現は難しい」といった批判も。今回の答申は学校や地域にも浸透するのか。中教審での議論に加わった千葉大教育学部の天笠茂特任教授と全日本教職員連盟の郡司隆文委員長に課題などを聞いた。(文化部 花房壮)

学校と地域 、成熟した関係に

千葉大教育学部の天笠茂特任教授

 --今回の答申では、教員の順守すべき残業上限として原則「月45時間、年360時間」以内という目安が明記された

 「現状からすれば、『すぐにできるものではない』というのが先生方の認識かもしれないが、それを是とすると、先には進まない。学校、地域がそれぞれ主体的に受け止め、自主性を大切にして取り組んでもらいたい。その意味で今回の答申は学校運営の一つの大きな転換点になる可能性があると思っている」

 --学校側と地域側との業務の見直しにも踏み込んでいる

 「この答申を浸透させるには、なお議論を要する。業務分担の見直しでは、(学校側が慣習的に担ってきた)登下校の見守りが保護者や地域のボランティアなどになっているが、それぞれの地域事情もある。学校側では対保護者、対地域への戦略・戦術として答申を利用するケースもあると思う。そうした中で、学校と地域との関係がよりいっそう成熟していくことを期待したい」

 --残業時間が増える主な要因の一つとして部活動が挙げられる

 「先生が部活動に熱心になる時期はあっていいと思うが、部活動はあくまでも教育の一環であり、それが崩れると健全性が損なわれる。先生には部活動を教育の一環として位置づけることが問われるし、校長にも部活動にのめり込みすぎる先生をコントロールすることが求められる」

 --部活動に熱心で実績もある先生は学校経営上、その存在感を無視できない

 「部活動で影響力のある先生は、地域から支持される存在であることも少なくない。その影響力のバランスを取ることも学校経営上の課題になる。校長と若手をつなぐ中堅(ミドル)が果たす役割も大きくなる。現場でリーダーシップを発揮できるミドルの育成が急がれる」

 --答申では、労働時間を年単位で調整できる変形労働時間制の導入も盛り込まれた

 「中教審の議論では『夏休み期間だけ労働時間を減らせば、他の月に負担が集中する』といった声もあり、賛否があった。実質的には学期単位の3カ月単位ぐらい、あるいは1カ月単位で適用するのがいいのではないか」

 --時間外手当を認めない代わりに給与月額の4%を支給する教職員給与特別措置法(給特法)の抜本的な見直しは見送られた

 「見直すべきだとの委員もいたが、答申では現状維持となった。この給特法をめぐる議論は以前からあるが、現行制度を維持する立場を是とした。財政上の課題を踏まえ、さらに検討を、と考えた」

 あまがさ・しげる 昭和25年、東京都生まれ。筑波大大学院博士課程単位取得退学。平成9年、千葉大教授に就任し、現在は同大特任教授。専門は学校経営学やカリキュラム・マネジメントなど。

曖昧な業務、国は線引きを

全日本教職員連盟の郡司隆文委員長

 --教員の残業上限に関する具体的数値を盛り込んだ今回の中教審答申をどう受け止めるか

 「ブラックといわれるような勤務実態の中で、教員が学力向上などに向けて十分な時間がとれているかといえば、不十分と言わざるを得ない。いじめの認知件数なども過去最高となっており、持続可能な学校運営ができる状況にはない。教員試験の倍率も軒並み下がってきており、教員の質の面でも足腰が少しずつ弱っている。そうした中で、業務のスクラップ・アンド・ビルドや残業時間上限の目安を盛り込んだ答申は、職場環境の改善に向けた起爆剤の意味を持つといえる」

 --ただ、残業時間が月45時間以上の教員は公立小中学校で8割以上とされ、順守は容易ではない

 「来年度から順守しないといけない、ということになれば現実的ではない。ただ、さまざまな業務を見直して、結果的に45時間に収めていく努力は必要だし、目安としての具体的な数値のインパクトは大きい」

 --学校側が担っている業務の見直しでは、登下校の見守りの分担が保護者や地域のボランティアなどに

 「こうした見直しが実現するかどうかは、校長ら管理職の決断力にかかっているが、実際は容易ではない。保護者や地域の要望がある限り、本音ではやめたいと思っていても踏み切れないケースも少なくない。これらを推進していくためには、教育委員会や文科省の強力なバックアップが絶対に必要になってくる」

 --そもそも学校業務の定義自体が曖昧になっている

 「その点は今後の検討課題となってくる。今回の答申自体は、改革のスタートラインにすぎない。今後、文科省にお願いしたいのは、残業上限の『月45時間』にどの業務を含めるかについてのガイドライン作りだ」

 --具体的にはどんな事態が想定されるのか

 「現場での業務の線引きは難しい。放課後のPTAの集まりへの出席、地域で開催されるお祭りの実行委員会の打ち合わせへの参加、部活動顧問による関係団体の業務への手伝い…。文科省は今後、現場の実態を把握するフォローアップを進めていく中で、一定の共通理解を得られるよう検討してほしい」

 --答申では、現状維持の方向でまとまった教職員給与特別措置法についてはどう考えるか

 「ほぼ半世紀前に制定されたこの法律は、月の残業時間を8時間と算定し、給与の4%を調整額として支給することを定めている。働き方改革を進めた上で、4%をアップさせる方向で検討する余地は出てくるかもしれない」

 ぐんじ・たかふみ 昭和43年、栃木県生まれ。東京学芸大大学院修士課程修了後、栃木県内で公立小学校教諭に。全日本教職員連盟事務局を経て、平成29年4月、同連盟委員長に就任。

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