PR

ニュース プレミアム

【石野伸子の読み直し浪花女】複眼のコスモポリタン陳舜臣(3)漢詩に生きるエキゾチック探偵 初の推理小説で江戸川乱歩賞

Messenger

 陶展文は作者お気に入りの探偵となり、翌年には早速、長編「三色の家」に再登場している。

 前作で50歳だった陶展文は第二作では一気に28年さかのぼり、留学中の東京の大学を卒業し、帰国途中の青年になっている。舞台は戦前の神戸。「三色の家」というのは当時は典型的だった三階建ての華僑商館のこと。1階は倉庫、2階は事務所、3階が住まいになっており、陳舜臣の実家がまさにその構造だった。

 友人の実家であるその三色の家に立ち寄ったとたん、殺人事件が起きる。商館独特の構造を生かしたトリックや水産加工品の商取引の様子なども興味深い。

 陶展文シリーズは著者の創作初期に集中的に書かれたがその後も散発的に書かれた。長編4作、短編6作になっている。最後の「王直の財宝」では70歳になっている。

 「枯草の根」は直木賞候補にもなった。陳舜臣はその後しばらく、推理小説に力をそそぐ。昭和38年には「方壺園」、41年には直木賞候補となった「炎に絵を」、44年には3度目の候補となった「青玉獅子香炉」で直木賞受賞。45年には「玉嶺よふたたび」で日本推理作家協会賞を受賞している。

 やがて歴史小説へとシフトしていく。なぜか。   =(4)に続く

     ◇

【プロフィル】石野伸子 産経新聞特別記者兼編集委員。生活面記者として長らく大阪の衣食住を取材。生活実感にもとづき自分の足と感性で発見したホンネコラムをつづるのを信条としている。

関連ニュース

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ