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【田村秀男のお金は知っている】“極ミニ経済”が告げる「強欲主義は無用」

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 暮れ行く平成30年(2018年)をにぎわすのは日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の報酬隠し・特別背任容疑と、華為技術(ファーウェイ)問題などを抱えながら禁じ手の「親子上場」を果たしたソフトバンクの公開価格割れだろう。

 いずれも「強欲」資本主義である。巨額のカネがいくら特定の企業や個人に集中しても、国内に流れ、循環すると、国民経済は成長するので、つじつまが合うものだが、前記の場合は国内には回らない。それは20年以上にも及ぶ慢性デフレ日本の特徴といえる。

 「カネは天下の回り物」とする日本人の気風はいつの間にか消失したのだろうか。ならば経済は0%前後の成長を今後も続けるのも無理はない、と漫然と思うのだが、最近訪ねた高知の道すがら、首都圏などでは見たことがないショッピング風景に出くわした。

 車道の脇に、にわか仕立ての祠(ほこら)のようなコーナーがあり、そこに野菜と袋詰めになった果物が置かれている。トマトは中玉3個で一袋。マジックで書かれた値段は「百円」。無人で、代金は四角い貯金箱の中に入れる。小さな鍵がかかっているし、簡単には持ち出せないように台にしっかりと固定されている。

 さっそく100円玉を入れて、トマトをいただく。冬でも南国だけあって、日差しをたっぷりと浴びた真っ赤な完熟の味はまさに絶品。様子を見ていると、お客さんが10分間で2、3人。いずれも地元の人で、70歳くらいの男性は奥さんに頼まれて駆けつけてきた。車で20分の距離にある主婦は週末のまとめ買いで、「新鮮、安全、安心。値段は高知市内のスーパーの10分の1だよ」と手にいっぱい野菜を抱えて満面の笑顔だ。

 このミニ版産地直販方式は「良心市」と呼ばれる。文字通り相手の良心を信頼する無人販売所で、ネットで検索してみると、高知県では戦前からあり、全国では高知県が圧倒的に多いという。注意して見ると、確かに国道、地方道の至るところにある。

 背後の畑から仕入れるので輸送費はゼロ、人件費も施設費もかからないので、超激安になるのだが、地元の警察駐在所の「速報」が貼られている。カネを払わないで持ち帰る不届き者がいるので駐在所が警戒していると書いている。商品の追加のためやってきたオーナーさんの農夫は、「1円だけや、100円硬貨に似ている韓国のウォン硬貨が入っているときもある。でも、お巡りさんの警告書のおかげで、不正は少なくなった」。

 良心市1件当たりの売り上げは1日平均2000~3000円程度だが、高齢化した農家でも対応できる。農協ルートの規格に合わない果物や野菜も喜んで買ってくれる。

 地元民の善意と喜捨に支えられる四国遍路の街道文化の影響によるとも言われるが、良心市は経済とは何か、を伝えてくれる。カネはわずかな規模でも円滑に循環すれば、生産者も消費者も全員がハッピーなのだ。極めてローカルなミニ経済社会が告げる。強欲なグローリズムは無用なのだと。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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