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【高論卓説】ファーウェイ問題で揺れる通信企業 日本の対応鈍さ露呈 渡辺哲也氏

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保釈されたファーウェイの副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟容疑者=12日、カナダ・バンクーバー
保釈されたファーウェイの副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟容疑者=12日、カナダ・バンクーバー

 世界シェア2位の中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)がイランへの制裁破りと米国の銀行を不当に利用した容疑によりカナダで拘束された。これは米国がカナダに逮捕を要請したと報じられている。この問題で、世界各国の通信企業が揺れている。

 現在、世界各国で2019年の開始に向けて、次世代の携帯電話規格5G(第5世代)の実証実験と設備投資が始まっており、この問題で投資計画と5Gの開始時期に大きな問題が生じる恐れがあるからである。携帯端末と基地局や通信システムの話を混同して報じられることが多いが、ここで最も問題になるのは基地局と通信システムである。特に5Gに関しては、単なる携帯電話やスマートフォンの話ではなく、常時接続による自動運転や自動配送などの産業や他のインフラと結びつく核となる部分だからだ。

 日本ではほとんど報じられなかったが、今年8月、米国で10月(米国では10月から新年度)からの軍事計画と予算を決める「国防権限法」が成立した。この法律では、19年8月13日以降、政府機関、米軍、政府保有企業が華為や中興通訊(ZTE)など5社の製品や部品を組み込んだ他社製品を調達することを禁じている。20年8月13日以降、対象企業の製品、部品などを利用している場合、米国政府や米国機関との取引はできない。当然、この対象は米国内だけにとどまらず、米国政府と取引する世界中の企業、個人、団体が対象である。この時点で米国議会は世界各国に対して、米国を選ぶのか中国を選ぶのか、一種の踏み絵を踏ませていた。

 今回の事件により、日本のメディアや携帯各社がいまさらながら騒いでいるが、8月に国防権限法が成立した時点で勝負は決まっていた。日本の大手企業のほとんどが何らかの形で米国政府や米国政府機関と取引している。

 例えば、在日米軍だけでも日本企業が大量の物資を納入している。安全保障を理由に米国との取引を切られたとなれば、その企業は信用問題を抱え込むことになる。当然、日本政府もこの対象であり、日本政府は政府調達から2社を排除する方針を決めた。

 これを受けて、携帯大手3社と新規参入予定の楽天は5Gでの中国2社の不採用と既存設備からの排除を進める方針を打ち出した。なぜならば、基地局や通信システムに2社の設備が入っていれば、米国の排除対象とされてしまい、法人顧客などを一気に失う可能性が高いからである。

 今回の事件での最大の問題は、日本政府と日本企業の対応の鈍さといってよいのだろう。4月に発生したZTE問題で米国議会は中国2社に制裁をかける方向で議論を進めた。トランプ政権は中国の習近平氏との合意によりZTEへの制裁を解除し、国防権限法からの中国2社への規制排除に動いたが、議会の大反発で、これが盛り込まれた経緯があった。

 この決定までの過程をきちんと追いかけていれば、今回のドタバタ劇を演じる必要もなく、無駄な投資を防ぐことができるとともに、採用先を切り替える時間的余裕があったはずである。国家にとって安全保障は全てに優先し、最悪の想定を考えた上でのリスク管理こそが経営者の最大の責務である。今回の問題は日本社会の大きな問題を露見させたともいえる。

                 ◇

 わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。

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