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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈39〉ゴーン帝国の落日?

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日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕され、本社で記者会見する西川広人社長=11月19日午後、横浜市西区(松本健吾撮影)
日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕され、本社で記者会見する西川広人社長=11月19日午後、横浜市西区(松本健吾撮影)

腐敗した王の追放劇?

 日産自動車を約20年にわたりかじ取りし、倒産寸前の危機からV字回復を成し遂げたカルロス・ゴーン会長(64)が19日、金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

 平成23年3月期から27年3月期までの5年分の報酬が実際には計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書に計約49億8700万円と虚偽記載した疑いだ。同社の西川(さいかわ)広人社長が同日夜から記者会見を開いて経緯などを説明した。それによると内部告発を受けた同社は数カ月かけて内部調査をし、その結果、ゴーン容疑者には虚偽記載のほかにも会社の資金を私的に流用するなど複数の重大な不正行為が確認された。同社は22日に取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解くよう提案した。

 有価証券報告書虚偽記載の実行行為者への罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される、と定められている。またこの不正は証券取引所の上場廃止基準にも該当する。それほどの重罪なのだ。

 ゴーン容疑者が直接指示していたのか、もしそうならその意図はどこにあったのか、直接の逮捕容疑のほかに会社法の特別背任罪や刑法の業務上横領罪を問えるのか、なぜ虚偽記載が5年も見過ごされてきたのか、意図的に見過ごしたとしたらその目的は何か、取締役会の勢力図はどうなっていたのか、日産は仏ルノーとの同盟をどう評価しているのか、他に逮捕者は出るのか…疑問はいくつもある。はたまた、日産へのルノーの影響力を弱めるための国策捜査ではないかという声も聞こえてくる。素人目に今回の騒動は、「腐敗した王」の追放劇のように見えるが、そんなに単純に捉えていいものなのか…。

人間は先人や前例に学ばない

 先進国においては、王様といえども富裕度においては、成功したIT企業の創業者やグローバル企業のトップには及ばないだろう。ゴーン容疑者は現代の王様のひとりといえる。

 モンテーニュは小さな封建領主であり、殿様といえる存在だった。彼は第3巻第7章「身分の高い人の不便窮屈について」にこんなことを書いている。

 《世の中で最もつらいむつかしい職業は、わたしの考えではふさわしく王たることである。(中略)あのように際限のない権力を持っていて節度を守るということはむつかしいことだ

 《人は王侯にあらゆる名誉の優越をゆずるとともに、それだけ彼らの欠点や不徳を助長し許容する。人はそれらを賞賛するばかりでなく模倣する

 こう記したうえで、モンテーニュは王様と彼に仕える人々のあまりに人間的な愚かしい行為を列記してゆく。たとえば、首をかしげて話す癖があったアレキサンダー大王のお供の者は、いちように首をかしげて話した。ローマ帝国時代のギリシャ人歴史家プルタルコスによると、ある家臣は、王妃が嫉妬するため、自分の美人の妻を離縁した。小アジアにあったポントス王国のミトリダテス6世は医術に関心があったため、その家臣は自らの体を実験台として提供して切り刻まれた(モンテーニュはこう書いているが、実際のミトリダテス6世は毒殺を恐れて解毒剤の研究開発に熱心に取り組んでいたので、切り刻むことはなかったと思われる)。かように主君に認められようとする家臣たちは、隷従根性を全開にして日々を生きていた。そうして彼らに持ち上げられた王様は、生来の欠点や不徳をどんどん肥大させてゆくのである。

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