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【高論卓説】再生の鍵握る事業が見えない東芝 「開発」に知恵絞れ 森岡英樹氏

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会見する東芝の車谷暢昭会長兼CEO=8日、東京都港区(宮川浩和撮影)
会見する東芝の車谷暢昭会長兼CEO=8日、東京都港区(宮川浩和撮影)

 元銀行員らしい手堅い中期経営計画だった。再建途上にある東芝は8日、平成30年9月中間連結決算と35年までの5カ年の中期経営計画「ネクストプラン」を発表した。計画の柱は(1)リスクを抱えた事業の売却・清算(2)人員削減などのコスト削減(3)事業の成長戦略-の3つ。中でも最大の懸念材料とみられていた米国の液化天然ガス(LNG)事業「フリーポート」を売却し得たことは、率直に車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)の手腕と評価すべきだろう。

 売却にあたり東芝は「フリーポート」に親会社保証を入れる一方、購入する中国の「ENNエコロジカル・ホールディングス」も信用補完として5億ドルの銀行保証状を東芝に差し入れる。当初、本命視された米ガス大手のテルリアンや石油メジャーへの売却ではこれだけの条件は引き出せなかっただろう。東芝は一時金費用としてENNに約930億円を支払うが、今後20年間で最大1兆円の損失リスクから解放される。

 また、買い手が見つからなかった英国の原発建設事業「ニュージェネレーション」は解散する。150億円の損失が見込まれているが、これら過去の「負の遺産」を一挙に清算した意味は大きい。新生東芝の「生みの苦しみ」と捉えるべきか。

 再生は社員にも負担を強いる。中計では1400人の希望退職を含め、今後5年間で7000人の人員を削減する。人員減の大半は定年退職者が占めるが、全社員の5%に相当する削減は苦渋の決断だ。東芝を去る社員の心中は察して余りある。経営陣は死ぬ気で再建に取り組まなければならない。

 しかし、肝心な再生の鍵を握る事業は見えてこない。中計ではインフラ事業を成長戦略の柱に据え、設備投資や研究開発に1兆7000億円強を投じる。リチウムイオン2次電池の工場新設や高い市場シェアを持つ電力設備やエレベーター事業と人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などのデジタル技術を融合し付加価値を高めるほか、再生可能エネルギー発電事業や空調などの拠点整備を進めるが、東芝の屋台骨を支えるには力不足の感は否めない。かつ、先行する競合他社を凌駕(りょうが)する競争力を出せるか、市場の見方は厳しい。

 やはり新生東芝を決定付ける画期的な技術革新・新商品の開発が必要だろう。かつて東芝は「かな漢字変換技術」を開発し、昭和53年にわが国初の「日本語ワープロ」を世に送り出した。2000字以上を数える常用漢字をワープロ変換させた技術は、その後のパソコンや現在のスマートフォンにつながる画期的な発明だった。まさに、「リーディング・イノベーション(革新のトップを走る)」を象徴するような技術革新だった。

 「ネクストプラン」の資料冒頭には、ヘルメット姿で現場を回る車谷氏の写真とともに「現場従業員との対話で『東芝DNA』を再確認」との説明が付されていた。顧客が求める東芝のDNAとは何か。メガバンクの副頭取から東芝に転じた車谷氏は、繰り返し自問自答する必要があろう。負の遺産から決別し、構造改革に踏み込んだ今中計は、東芝再生の第一歩にすぎない。元銀行員らしい中計から脱するとき、東芝の本当の未来が見えてくる。

                ◇

 もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。

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