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【関西の力】教育(1)ラサール石井、灘、東大…伝説の入江塾

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夏合宿のスケジュール
夏合宿のスケジュール

 「1~2年、一緒に受験勉強をしただけの仲間が集まるのは、塾で過ごした時間が、それだけ濃密だったということ」。同窓会の幹事役の料理店「美々卯(みみう)」の薩摩和男社長(65)は振り返る。

 薩摩さんは中学3年だった昭和41年7月、成績を案じた父に連れられ、入江塾の門をたたいた。古びた2階建ての木造家屋。エアコンもない教室で、ランニングシャツ、ステテコ姿の入江が生徒に教えていた。「『人間七分、学力三分やで』。これが、先生の口癖でした」

 入江は「本来、子供は前向きにたくましく育つ力を持っている。環境を整えてやれば勝手に走り出す」と語っていたが、現実の厳しさとは向き合わせた。

 入塾後のクラス分けテストでは、中3でも、実力に応じて中1のクラスに放り込んだ。その上で、「謙虚でたくましい自信」が身につくよう日々の生活実践を重視した。

生徒も運営担う

 その理念を象徴するのが生徒自ら塾運営の一端を担う「当番」制度だ。教務、広報、清掃係…。夏休みなど長期休暇の合宿では、炊事や風呂係も加わった。「勉強の邪魔」と、不満を募らせ、子供を退塾させる親もいたが、入江は意に介さなかった。

 当初、公立の名門高を目指した薩摩さんも、灘高に挑戦し合格。その後、東大に進んだ。東大4年の夏、後輩を指導する「教生」として塾の合宿場に迎えられると、後輩たちに、まず履物や布団の整理整頓から教え始めた。

入江流、高校入試突破の法則
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関西の塾に波及

 スパルタ指導には賛否はあったが、生徒にとことん密着し、学力だけでなく礼儀などにもこだわるスタイルは注目を集め、世話好きな指導者たちによって入江塾をまねた学習塾も生まれるなど、その後の関西の進学塾のあり方にも影響を与えた。

 全国に教室を展開するある進学塾の幹部は、関西と関東の進学塾の違いについて「一概にはいえないが、関西の方が授業時間が多く、生徒の拘束時間が長いイメージがある」と指摘。

 そのうえで「関東の保護者は『短い学習時間で合格させてほしい』とスマートさを望むが、関西は『全部お任せしたい』と塾に手厚いサポートを求める人が目立つ。塾側もそうした思いに応えようとしているのではないか」と話していた。

 関西の保護者たちは塾に、学力にとどまらない教育力を求めているのかもしれない。入江も「生活実践の姿勢さえ正しければ、学力は自然に付いてくる」と考えていた。そこには一人一人の自立が肝心だという信念があった。

     (平成29年7月19日夕刊1面掲載 年齢や肩書き、呼称は当時)

 伝統、文化、医学、農業、エンターテインメント、スポーツ…。関西には世界に誇れる魅力あるコンテンツがあふれている。現状の停滞を打破し、突破できる「力」とは何か。この連載では、さまざまなジャンル、切り口で「関西の力」を探る。

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