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【平成30年史 変わる働き方(2)】若者や女性も犠牲に 過労死、今も社会の深い病理

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【平成30年史 変わる働き方(2)】
若者や女性も犠牲に 過労死、今も社会の深い病理

 当初は脳や心臓に疾患が起こり、突然亡くなる「過労死」が多かった。ところが次第に、精神障害を患う「過労自殺」のケースが増えてきている。年齢層を見ると、バブル景気で「企業戦士」がもてはやされた昭和の末期は40~50代がほとんどだった。近年はリストラのしわ寄せで負担が増えてきたとみられる20~30代や、女性が過労自殺する事例も出てきた。

 電通の新入社員だった高橋まつり=同(24)=はその象徴だ。高橋はインターネット広告を担当していたが、月100時間以上の残業などを苦に平成27年12月に寮から投身自殺した。

 「電通の女性社員が亡くなった。遺族の方の相談を受けていただけませんか」。川人は翌年2月、知人からこう相談を受けた。事務所で高橋の母、幸美(ゆきみ)(55)と面談し、事件の詳細を聞いた。結局、代理人を引き受けるが、「気が重かった」。

 デジャビュ(既視)だった。川人は3年に過労自殺した電通の社員、大嶋一郎=同(24)=の訴訟代理人を務めていたからだ。12年3月の最高裁判決は電通の責任を全面的に認めている。「事件を深く反省し、かかる不幸な出来事が二度と起こらないように努力します」と電通は約束したはずだった。

 その後、公表されていないが、川人は他の電通の遺族と3回会っている。「最高裁判決が出てもまだ変わっていなかったのか。もっと強くやっていれば」と忸怩(じくじ)たる思いを抱えている。電通だけではない。過労死の相談事案は今も川人のもとに舞い込む。川人は嘆いた。「過労死は日本社会の深い病理だ。これは容易に変わらない」と。(敬称略)

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