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【昭和天皇の87年】乃木希典の殉死 明治の精神は「天皇に始まつて天皇に終つた」

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【昭和天皇の87年】
乃木希典の殉死 明治の精神は「天皇に始まつて天皇に終つた」

画=豊嶋哲志 画=豊嶋哲志

 学習院出身で白樺派の代表格だった志賀直哉は日記で、乃木の殉死を「『馬鹿な奴だ』といふ気が、丁度下女かなにかゞ無考へに何かした時感ずる心持と同じやうな感じ方で感じられた」と突き放した。

 芥川龍之介も小説「将軍」の中で乃木を茶化し、登場人物に「(乃木の)至誠が僕等には、どうもはつきりのみこめないのです。僕等より後の人間には、尚更通じるとは思はれません」と語らせている。

 明治維新以降、日本は西欧列強の脅威を受けながら、富国強兵の道を一途(いちず)に、がむしゃらに進んできた。しかし日清日露の戦役に勝利し、列強の仲間入りを果たすと、外に向いていたエネルギーが内に向くようになる。

 明治の終焉-。それは良くも悪くも、大正ロマンや大正デモクラシーといった、新しい流れを生み出していく。

 一方、国外ではその頃、朝鮮半島情勢が激しく揺れ動き、それが日本と裕仁親王の将来に、暗雲となって覆いかぶさることになる--。(社会部編集委員 川瀬弘至 毎週土曜、日曜掲載)

(※1)易姓革命 ある姓の王朝が断絶して別の姓の王朝ができること

(※2)霊轜車 貴人の柩(ひつぎ)を運ぶ車

【参考・引用文献】

○秩父宮雍仁親王著『皇族に生まれて-秩父宮随筆集』(渡辺出版)

○学習院輔仁会編『乃木院長記念録』(三光堂)

○甘露寺受長著『背広の天皇』(東西文明社)

○黒木勇吉著『乃木希典』(講談社)

○同書収録の「遺言条々」「遺書」「夫妻死体検案始末書」

○宮内庁編『昭和天皇実録』3巻

○夏目漱石著『こゝろ』(岩波書店)

○新渡戸稲造談「大将の心事を明かにせばあらゆる方面に好影響を及ぼさん」(雑誌『中央公論』大正元年10月号所収)

○志賀直哉の日記(『志賀直哉全集』第10巻〈岩波書店〉所収)

○芥川龍之介著『将軍』(新潮社・名著復刻芥川龍之介文学館)

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