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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈32〉『神やぶれたまはず』再読

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 「特別な瞬間」とは、玉音放送が流れた昭和20年8月15日正午のことである。21年生まれの長谷川さんは、「特別な瞬間」に立ち会い、鋭敏な感受性と知性でとらえた折口信夫、橋川文三、桶谷秀昭、太宰治、伊東静雄、磯田光一、吉本隆明、三島由紀夫の言説を丹念に検証し、さらに旧約聖書の「イサク奉献」をめぐるジャック・デリダやキルケゴールの考察を取り上げて、神と人間の根本関係について思索を進める。

 ここで長谷川さんは、全知全能であるユダヤ教の神が唯一できないのが死ぬことであるのに対し、われわれの神は多くの欠点を抱えてはいるが死ぬことができるとの指摘をする。そのうえで、われわれ日本人が死をささげ、われわれの神が返礼として自らの死を差し出してくれたときに、神と人との特別な交わりの瞬間が訪れるという。

 冒頭で紹介した《日本国民全員の命と天皇陛下の命とは、あひ並んでホロコーストのたきぎの上に横たはつてゐたのである》という言葉は、まさにその瞬間を表現したものだ。「ホロコースト」とは、ナチスによるユダヤ人大虐殺の意味ではなく、ユダヤ教において、神の心をなごませるために、たきぎの上に殺したヤギをのせて焼き、その煙を神にとどかせるという儀式のことだ。

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