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【赤字のお仕事】「逆恨み」に潜む人間模様とは…

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 もう10年以上前のことですが、平成19年4月17日、伊藤一長(いとう・いっちょう)長崎市長が4選を目指した市長選の選挙運動中に銃撃され、翌日死亡する事件が起こりました。銃撃犯は暴力団幹部で、市に対する恨みからの犯行とされています。

 当時、この事件は世間に衝撃を与え、連日、新聞、テレビなどで大きく報じられた記憶があります。産経新聞でも1面のコラム「産経抄」で取り上げられ、その原稿の校閲を担当することになりました。

 「産経抄」は東京版と大阪版で同じものを掲載するのですが、校閲は原則、東京本社で行います。そのときも東京で校閲をして校了になった小ゲラ(記事を紙面で使用する体裁に組んだ物)を大阪本社の校閲部にファクスし、一息ついていました。

 すると、大阪の校閲担当者から電話がかかってきました。話を聞くと、送られてきた「産経抄」の中に気になる表現があるとのことです。

 それは、暴力団幹部が「車をめぐるトラブルで長崎市に金銭を要求し、それが拒絶されたことを逆恨みしたのが動機のひとつのようだ」と書かれた箇所でした。この中に使われている「逆恨みした」という表現は、用字用語の手引『産経ハンドブック』によると、今回の事件に当てはまらないのではないかというのです。

 そこでハンドブックを確認したところ、「逆恨み」の説明にこうありました。

 「恨みに思う人から逆に恨まれること、また好意を曲解して悪く受け取り恨むこと。『忠告を逆恨みしての犯行』はよいが『無視されたのを逆恨みしての犯行』のような使い方は誤り」

 つまりこの事件に当てはめてみれば、市長が暴力団幹部を以前から恨んでいた、あるいは市長が幹部に好意的に接していたならば、幹部に逆恨みされることはあるかもしれません。しかし、実際には市長が幹部と面識があったと報道されてはいないので、逆恨みされるような状況にはなかったのではないかということです。

 私は急いで筆者に「逆恨み」の正しい用法を説明して修正の了解をとり、「逆恨みした」を「恨んだ」に置き換えて、「…それが拒絶されたことを恨んだのが動機のひとつのようだ」と直し、事なきを得ました。

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