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【スポーツ異聞】自立した集団・筑波大柔道部、「校風」発露の全日本学生優勝大会決勝での“決断”

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【スポーツ異聞】
自立した集団・筑波大柔道部、「校風」発露の全日本学生優勝大会決勝での“決断”

全日本学生優勝大会決勝の代表戦で、東海大・太田彪雅(右)と組み合う筑波大・佐々木健志=日本武道館 全日本学生優勝大会決勝の代表戦で、東海大・太田彪雅(右)と組み合う筑波大・佐々木健志=日本武道館

 主将の佐々木は、厳しい環境で磨かれた珠玉といえる。重量級を一瞬でほうり投げる体のバネ。窮屈な姿勢から技を出せる、秀でた平衡感覚。大柄な相手ほど燃え立つ闘志、チームの窮地に奮い立つ男気。「道場でも私生活でも、全てが手本になる選手」(小野監督)という。

 散り方も実に清々しかった。118キロの太田に腰を引くことなく、懐に飛び込む果断の攻めが、観衆のどよめきを何度も誘う。両足が宙に浮き、背中が激しく畳を打ったのは、代表戦の開始1分37秒。佐々木の体が紙のように軽く、薄く見えるほど、太田の払い腰は鮮やかだった。

 「優勝に値する結果だと思う。想像以上に力を出し切ってくれた」。俊秀の系譜に新たな歴史を加えた選手たちに、小野監督の目は真っ赤。

 負の感情をかみ殺し、「自分のせいで…」と武道館の天井を仰いだのは佐々木だ。「課題が多い。まだまだだと思います」と、多くを語ることなく敗戦のとがを一身に背負った。この雪辱は今夏のアジア大会で-。悔恨と屈託で充血した目が、そう語っている。

 選手の「自主性」とは詰まるところ、2本の足で立ち、自身の力で歩こうとする意思の発露にほかならない。「指導」とは本来、可燃物を抱えた選手に火種を差し出し、選手自身の手で点火させる作業でしかない。優れた指導者ほど、その作業をさりげなくできる。小野監督は、その1人だろう。

 監督の心残りは、勝ち負けとは別のところにあったようだ。「できることなら、最後の1秒まで試合をさせてやりたかった」と。選手に寄せる指導者の情愛もまた、「校風」が育てたものかもしれない。(森田景史)

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